この度、現代芸術振興財団は、当財団主催のアートアワードCAFAA賞2016年グランプリ受賞者、松下真理子による個展「人間の声」を開催いたします。
松下はこれまで、性愛や生きる痛み、自然や原我との対話、各地の死生観などをテーマに、絵画表現をはじめ、各地で集めた赤い布で窓を覆うインスタレーション「赤い部屋」や、ロンドンに生息するキツネを追う映像作品「Little Fox in London」、詩や立体、写真など、多岐にわたる方法で作品を発表してきました。
それらの作品は、「人間とはどのようなものか」と絶えず私たちに問いかけ、肉薄する力強さを宿しています。人間の存在を追求し、歴史における死や痛みや絶望の影が忘れられていくことについて、社会の歪みについて、静かにそして強く抵抗しています。
本展では2021年に制作したシリーズを発表します。命や、社会の在り方について、様々な解釈や想像を導く貴重な機会となるでしょう。
個展に際し、以下に松下の文章を掲載します。
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人間の声
私がここに、語ろうとすることも、あの小さな声の一つにすぎないのかもしれません。
しかし、すべてを盗まれた底においてさえ、忘却を押しかえす小さな声は、沈黙と同じではありません。
私は針のようなあの声を聞かずにいられないし、私の身体のあちこちにも穴があいて、叫びと化すのを隠しておくことができません。
私はあの人間の声に従い、暗闇に次の飛び石をおこうとしています。
この一連の飛び石の配置は、その前に人間が滅んでしまわなければ、我々を、否定のないどこでもない所へと、連れていくでしょう。
激しい風の跳躍が、徴しをつけるところへ、私は手を差しのべています。
2021年10月 松下真理子
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松下真理子は1980年大阪生まれ。2004年に京都市立芸術大学美術学部油画専攻卒業。2016年、第2回CAFAA賞において最優秀賞を受賞し、英ロンドンのデルフィナ財団のアーティストインレジデンスにも参加しました。国内だけでなく海外での活躍も期待されています。
主な展覧会に「居住不可能として追放された土地」(個展、KEN NAKAHASHI、東京、2020年)、「愛の飾らぬことばにおいて」(個展、銀座蔦屋書店 GINZA ATRIUM、東京、2020年)、「IDO」(個展、matchbaco、東京、2016年)などがあります。
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CAFAA賞は現代芸術にかかわる、教育機関を卒業後10〜15年程度のアーティストを対象としたアートアワードで、次なる世代の柱となる才能あるアーティストを選抜し、国際的に活躍するきっかけを提供することを目的に、2015年より実施しております。
<展覧会概要>
松下真理子個展 「人間の声」
会期:2021年10月28日(木)-12月18日(土)
会場:現代芸術振興財団(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル4階)
開廊時間:会期中の木・金・土、12:00-18:00(日・月・火・水・祝休廊)
協力: KEN NAKAHASHI
《声1》2021年 Oil on canvas © Mariko Matsushita (撮影: 齋藤裕也)
《声2》2021年 Oil on canvas © Mariko Matsushita (撮影: 齋藤裕也)
松下の直筆ノート
*オープニングレセプションは開催いたしません。
*今回より松下は名前の表記を「松下真理子」と変更しています。
【松下真理子展リーフレットダウンロードはこちら】
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