INTERVIEW

Artists #2 大石 一貴

7月10日より東京・銀座蔦屋書店のGINZA ATRIUMにて、大石一貴さんが展示に参加されます。大石さんはCAF賞2018で<海外渡航費授与者>に選出。(CAF賞2018:https://gendai-art.org/caf_single/caf2018/)CAF賞入選作品展では、生活家具とわずかな人の気配をモチーフとして、異質な生活空間を構成するインスタレーション作品「架空の男による私のドキュメンタリー」を発表されました。今回の銀座蔦屋書店の展示は、大石さんが主に活動の場としているシェアアトリエ兼展⽰スペース「WALLA」のメンバーと、WALLAのメンバーが招聘した作家たちとのグループ展として開催されるということです。
本展についてより詳しく、大石さんを含めたWALLAのみなさんにお話を伺いました。

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Q1:今回は「WALLA」のメンバーと招聘した作家で構成されるグループ展として開催されるとのことですが、WALLAは普段どのような活動をされているスペースですか?また、招聘作家はどのような経緯で決定されましたか?

WALLAは2019年の夏に東京・小平市で始動したスペースです。二階建ての一軒家で、普段は共同運営する4人(大石一貴 、大野陽生、前田春日美、吉野俊太郎)がそれぞれのためのアトリエとして二階を使用するほか、一階のギャラリースペースを使用しての展覧会やレクチャーイベントなどを企画開催し、多くの方に訪問していただいています。
今回の展示「WALLAby」においては、WALLAという場所をどのように銀座へと持ち出すかという議論から、招聘作家を登場させる案へと至りました。アーティスト・コレクティブと呼ばれるようなグループとしての一致団結の信条を持たない我々は、小平においても「したいことをする」ための場所としてWALLAを利用しています。作品制作に一人集中できる環境を求める者もいれば、一つのグループを持つことで自身の制作へのモチベーションを維持できる者もいる。はたまた作品の制作よりも企画の制作に関心のある者もいる。そうしたバラバラの欲望を達成できる場としてWALLAが共有されているのであれば、展示においてもそれは維持されるべきだろうという結論に至り、今回WALLAの名前を冠する展示に招聘作家2名が共存する内容となりました。
招聘作家2名のうち、写真家のコムラマイさんは個人での作家活動の傍ら、最近ではWALLAメンバーの前田春日美さんとの共同制作を複数進行させており、"からだ"という共通のモチーフを抱える作家です。彫刻家の柿坪満実子さんは人の形の在り方に着目した制作を続ける作家で、大野陽生さんとの共通性が見られるほか、今回は吉野俊太郎さんの台座形の作品とのささやかなコラボレーションにも試みます。

WALLA外観

”WALLA”ロゴ デザイン:浦川 彰太

WALLA内観(2020年3月「嘔吐学vol.1 ユー体、後ケイ」展示風景)

Q2:どのような経緯で銀座蔦屋書店での展覧会を開催する運びになりましたか?

今回の企画展示を担当されている方が以前、WALLAで行われたイベントに足を運んで下さったことがあり、それがきっかけになりました。
WALLAがいわゆるアーティスト・コレクティブとしてではなく、所属する作家がそれぞれ独立した制作と考えを持った上で「場所」を運営しているということ、また、そうやってアーティストが運営するスペースが増えている最近の状況とも関係しているとして興味を持たれ、今回の展示の機会を頂きました。

Q3:どのような作品を展示しますか?目玉作品はありますか?

会場では、WALLAメンバー4人+ゲスト2名の、それぞれ全くバラバラなアプローチや展示形式をお楽しみいただけることと思います。
特に今回は、大石さんが初の試みとして発表する電子ドラムを用いたパフォーマンス《1日目と10日目で少しドラムが上手くなってる人》や、前田さんの、固定された自身の手を記録する映像作品《Figurehead》にもご注目いただければと思います。コムラマイさんによる"接写"の写真像のこだわり抜かれた肌理や、ファンシーながらもどこか戯画的な態度をとるようにもみえる柿坪さんの彫刻作品も必見です。


Q4:展示を計画・準備している際に印象深かったことや苦労したことはありますか?

やはり今、社会的距離を保つことが推奨される状況の中でグループ展を一から作り上げることの難しさを実感しました。
普段は実際の展示スペースなどで対面しながら進めていくことでスムーズな情報共有ができていたと思いますが、今は互いに情報のひとつひとつを丁寧に提示し相談していくことが展示を成り立たせる上で必要不可欠になっていると感じます。
しかしそんなやりづらくも感じられる状況だからこそ、一人一人の展示に対するモチベーションはとても高いです。短い準備期間にもかかわらず、新作や新しい試みを皆用意しており、そういう意味では「WALLAの展示(したいことをする)」と同じことが今の銀座でも展開されようとしているのだと思います。楽しみです。


Q5:今回の展覧会は、ご自身のキャリアの中でどのような位置づけ、どのようなインパクトがあると思いますか?

WALLAはオープンしてまだ1年と経っていませんが、展示やイベントには毎回多くの方に足を運んでいただいています。たまたま彫刻を専門とするメンバーが中心となって運営していますが、領域や手法を限ることなく企画を行っている為、他領域を専門とする訪問者も多く、毎回新しい交流を生むことができています。
今回の蔦屋書店での展示でWALLAのことをまた多くの方に知っていただければ、美術館やギャラリーの多い都心からは少しだけ離れた場所で行われる実験的活動を、さらに多くの人に目撃していただける機会を増やせるのではないかと思っています。WALLAの場所としてのポピュラー化ではなく、そこの周りでワラワラしてる人々の活動や視界が熱を帯びていければ嬉しいです。


Q6:この展覧会の他に展示の予定があればお知らせください。

小平にあるWALLAは新型コロナウイルス感染予防のため、現在展示やイベント等は行えていませんが、中止になったイベントや元々予定されている企画をはじめ、目処が立ち次第開催する予定です。8月にはオープン1周年のイベントも計画中。それと同時にウェブサイトも公開されることになっており、WALLAとしての新しい場所をウェブ上にも展開する試みも計画中です。ご期待下さい。



開催概要

タイトル:WALLAby / ワラビー
出展作家:大石一貴 、大野陽生、柿坪満実子、コムラマイ、前田春日美、吉野俊太郎
会期: 2020年7月10日(金) - 7月19日(日)10:00 〜22:30
会場:銀座蔦屋書店GINZA ATRIUM(東京都中央区銀座6丁目10-1GINZA SIX 6F)
展覧会HP:https://store.tsite.jp/ginza/event/art/14438-2259110618.html
WALLA HP:https://www.facebook.com/walla.space/ *公式HPは8月ごろ公開 
在廊日:会期中は毎日大石さんがパフォーマンスを行う予定(時間不定期)、他作家は不定期。

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大石 一貴|Oishi KAZUKI
 
1993 山口県生まれ
2016 東京造形大学彫刻専攻 卒業
2018 武蔵野美術大学大学院彫刻コース 修了
 
個展
2018 「10月11日に片付けます」武蔵野美術大学(東京)
2017 「and your personal space rally#1」武蔵野美術大学(東京)、「連続個展企画、むしろ例えてしまう-同じレベルのオーボールラトル-」東京造形大学ギャラリーmime(東京)
2014 「お羊さんの人生展」東京造形大学ギャラリーmime(東京)
 
グループ展
2019 「群馬青年ビエンナーレ2019」群馬県立近代美術館(群馬)、「Mixed Material Arts Vol.1  首像」麻布十番ギャラリー(東京)、「別人」芸宿103(石川県金沢市)、「東風」武蔵野美術大学FAL/東京造形大学CSギャラリー(東京)「PACK2019: STATION!」Post Territory Ujeongguk(韓国・ソウル)、「Ongoing FES 2019 Ongoing 祭りーArt Fair Ongoing-」Art Center Ongoing(東京)、「Open Studio in KURATA SOUKO」倉田倉庫群(東京、瑞穂町)
2018 「アタミアートウィーク2018」大館ビル506号室(静岡・熱海市)、「平成29年度武蔵野美術大学造形学部卒業制作・大学院修了制作優秀作品展」武蔵野美術大学(東京)、「フィクションアンドペースト」金真希/大石一貴 Art Center Ongoing(東京)、「Ongoing FES 2018 Ongoing 祭りーArt Fair Ongoing-」Art Center Ongoing(東京)、「作品を[飾る]#1」SUPER OPEN STUDIO 2018@相原スタジオ(東京)、「視覚の再配置A4」SHIN美術館(韓国・清州市)、「CAF賞入選作品展覧会」代官山ヒルサイドテラスF棟ヒルサイドフォーラム(東京)
2017 「彫刻と対話法Ⅲ‐思いどおりにする、をするか‐」府中市美術館(東京)
2016 「シューズボックスからの世界」清州市立美術館(韓国・清州市)
2015 「Cross Talk..」丸沼芸術の森(埼玉)

受賞
2019 「群馬青年ビエンナーレ2019」優秀賞
2018 「平成28年度武蔵野美術大学卒業・修了制作展」優秀賞、「CAF賞入選作品展覧会」海外渡航費授与者選出
2016 「東京造形大学卒業制作展-ZOKEI展2016-」ZOKEI賞

Contemporary Art Foundation