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Artists #15 根本祐杜

現在、根本祐杜さんがToken Art Centerにて個展「ナッシングアットオール」、また、同時開催という形で、CADAN有楽町では倉田悟さんと二人展「Infinite Jest」を開催されています。根本さんはCAF賞2018(https://gendai-art.org/caf_single/caf2018/)で最優秀賞を獲得、昨年1月には最優秀賞副賞の個展「PERFECT OFFICE」の開催を経て、同年2月から9月までは東京藝術大学の交換留学制度の機会でギリシャ・アテネのアテネ国立芸術大学に留学をされていっしゃいました。現在は東京藝術大学大学院博士課程に在籍されながら、都内を拠点に活動をされています。今回は根本さんに展示のお話を中心に、ご留学中のお話や最近の制作活動についてのお話を伺いました。


--根本さんは現在、Token Art Centerで個展、CADAN有楽町では倉田悟さんと二人展を開催されていますね。まず個展についてお話を聞かせてください。

根本:私はCAF賞2018で最優秀賞をいただきまして、昨年の2020年1月に最優秀賞副賞の個展「PERFECT OFFICE」を開催しました。(PERFECT OFFICE公式ページ https://gendai-art.org/caf/nemoto/)その私にとっては記念すべき初個展の際に、今回の個展会場であるToken Art Center代表の高村さんが見にいらしてくださって、個展をやりませんかとお声がけくださいました。ただその時、PERFECT OFFICEが終わったあとすぐにギリシャへの交換留学が決定していたので、帰国後に開催をお願いできないかと相談させていただき、現在2021年の2月に開催するということでとりまとまりました。

--今回の個展ではどんな作品を発表されていますか。

根本:この個展では、留学先のアテネ滞在中に考えたことや現地で制作したものを展示しようと思っていました。ところが、コロナ禍の影響でほぼ大学に行けなかったりして、本来作りたかったものを、コロナウイルス問題により忘れてしまったので、帰国してから日本で制作したものを展示しました。場所的な問題や材料の問題もあって、むこうでは立体的なものはほとんど作れず、絵本を書いたり、毎日ドローイングを描いて、結果的に日めくりカレンダーみたいなものが出来上がったりしました。今まで私は展示において直接的に絵を展示したことがなかったので、留学先で描きためた絵もたくさんあったので、絵の展示を試しに行ってみました。

<ドローイング> 2021 / 紙にペン、セラミックの枠 / サイズA4
ナッシングアットオール展示作品一部

--個展のメインビジュアルも絵ですね。

根本:この絵には私の特別なストーリーがあります。       
留学先の大学の近くにリサイクルショップがあって、そこに現地の美大生が作品を売りに行くんですが、作品やら品物が乱雑に置かれている中で、念がだいぶ込められている、あの作品の元絵となった作品を発見しました。大学が始まってすぐの帰り道にその作品を20ユーロ(約2,500円)くらいで購入して、その後はずっと家に飾っていました。全く誰かもわからないおじさんの肖像画を、馴染みのない国で私の部屋に飾っているという状態が面白いなと思ったということなどもあって、とても気に入っていたんです。帰国する時は日本に持って帰ろうと思ったんですが、大事にしすぎていたため空港に忘れてしまって、ギリシャの友達に頼んで空港会社に連絡してもらったりして頑張って取り戻そうとしたんですが、結局は紛失してしまいました。それで日本への帰国途中のトランジット先でその作品を自分が思い出して描き起こすことを思いついて、自分のためにこの絵を描きました。似たものであればできるだろうと。会場は二階建てなんですが、二階奥に実際に僕が描いた絵を展示しています。

本展メインビジュアルになっている作品の元絵

--個展会場一階には大型の人のような立体作品もあります。

<ナッシングアットオールマン> 2021 / セラミック、垂木、タイラップ / 250 × 500 × 300cm
ナッシングアットオール展示作品一部

根本:ナッシングアットオールマンですね。私はギリシャ滞在中、一日一枚絶対に絵を描かなきゃいけないというノルマを自分に課していて、そのルールを破ってしまったら何かよくないことが起こるみたいな暗示を自分自身により、かけられていました。つまり自分自身による洗脳状態だったわけです。その際、絵のクオリティとかはとりあえずどうでもよくて、何かを描くというのを念頭に置いて、ひたすら毎日ドローイングを描いていたんですが、棒人間は数秒で描けることもあってか、ドローイングによく出てきたんです。また、棒人間という造形的に対極に位置するギリシャ彫刻などをたくさんみれたことも今回の制作に少なからず影響しているのでしょう。
それから個展に向けての準備でToken Art Centerに訪れた時、一階には棒人間を置こうと最初に決まりました。棒人間に関してはイメージの段階でまあなんとかなるだろうという予想もできたので、早く完成形がみたいと思っていました。会場の一番目立つところにインストールしたのは、そもそも棒人間を立体で作っている人ってあまりいないと思うので、何がたち上がるのか自分が見たかったというのもあります。

--昨年の個展「PERFECT OFFICE」の作品の中のメインであった「NEW SHIT PRESIDENT = うんこおじさん」も、なぜか昔からご自身のドローイングによく登場した、というお話でしたよね。

<NEW SHIT PRESIDENT> 2020 / セラミック、土、キャスター / 300 × 500 × 500cm
PERFECT OFFICE展示作品一部
写真:木奥 恵三

根本:そうですね、うんこおじさんも棒人間もそういう意味では近い存在です。イメージの蓄積ですかね。また、「NEW SHIT PRESIDENT」と「ナッシングアットオールマン」は連続した作品なのかもと最近考えるようになりました。「NEW SHIT PRESIDENT」がマッシブなのに対して「ナッシングアットオールマン」はすかすかという。

--棒人間の作品は自立させるために角材を大量に使っています。

根本:支えがないと直立できない存在みたいに扱っていて、躯体であるセラミックの棒をタイラップで固定していたり、その木枠自体も作品としてカウントしています。裏側をよく見ると汚い垂木で組んであってビスの跡も付いていたり、そういった痕跡含めての作品です。
二階にある棚の作品とかは、どんな位置や角度でインストールするか何度か検証できたのですが、棒人間に関しては陶器で出来ているナッシングアットオールマンの手が重すぎて一人で手を固定するのは危険と判断したため、展示前まで完成形を見ることができなかったので、会場にインストールした際に初めて作品の完成形が自立しているのを見ましたね。その面も「PERFECR OFFICE」のうんこおじさんと同じですね。あれも2トン半以上の土を使って会場で初めて作品の完成形を目にしましたから。というかうんこおじさんに関してはそうするしかなかったのですが。

二階のスペース作品に関してですが、鉄の棚につぼや人の頭などが置かれて構成されている作品があります。「A・M picnic」この作品は人工芝の上に作品を配置しています。

<A・M picnic> 2021 / ミクストメディア / サイズ可変
ナッシングアットオール展示作品一部

現在、私の住んでいる家の一階も同じように人工芝を敷いているのですが、家の中で地べたに座って友人や知人などと話すのがなんとなくしっくりきていて、いいコミュニケーション方法だなと考えていたのですが、人工芝を敷くアイデアはそこからきています。
タイトルのA・Mは阿吽の意味合いで使っていて鉄の棚は2つあるのですが、一番上の段に頭などがのっていて人物としても受け取ることができると思うんです。この鉄の棚は私が一から設計し溶接したものなのですが、私の実家が運送屋でして、いらなくなったトラックのすごい長いバンパーを切断して再利用したりしています。溶接自体が不慣れなこともあり、溶接した時に生じる光を見すぎてだいぶ視力が落ちてしまいましたが、なんとか完成することができました。

<A・M picnic> 制作の様子と根本

--棒人間は胴体部分と比べて頭や足などは大きめに丁寧に作られている印象があります。

根本:そうですね、どっちかをちゃんと作って、どっちかはちゃんとしないみたいな風にしました。足はかなりリアルに作りましたが、手とかは子供が描いたグローブみたいな手にしています。私はドローイングとかでも手はあまり丁寧に描かないようにしていて、あえて食パンみたいな手を描いていたりしています。なんかそれが好きなんです。

ナッシングアットオールマン作品細部

--個展タイトルは「ナッシングアットオール」(なにもない)ですが、これはどうやって決めたんでしょう。

根本:私の中では、このToken Art Centerでの個展は時期的にも、留学を経ての<成果展>と考えることができて、ギリシャへ留学をしたことで何を持ち帰ってきたか・何を学んできたか、みたいなことを発表する機会とも捉えています。それで、「特に何もありませんでした」というアンサーをタイトルにしました。もちろん、そのままの意味ではなくていろいろなことがありましたが(笑)。あとこれは感覚的なことですが、タイトル決めの時は言葉のリズムも大切にしています。語感の良さみたいなことです。「PERFECT OFFICE」の時もそうでした。

--根本さんは過去の作品や展示でも「社会的に大勢の人が判断する良い、あるいは正しい」と期待する事象や態度にカウンター的な、クリティカルな作品を作られていますが、その姿勢の発端はなんでしょうか。

根本:あ~、、ふ~ん、、、(1分ほど長考)
なんなんですかね(笑)。自分の実体験だったり、嫌だなと思ったこととか、そう言った気持ちを作品とすることもありますし、ただ何かに対して明確なカウンターとか、そういう狙いがあるわけではなくて、社会に生きている以上、自分に限らなくても同じような感覚を持っている人は大勢いるとは思うのですが、自分は特に気質的に、ふざけたいというか、理不尽システムを使って遊んでいくみたいなのが強いのかもしれないです。

--同時開催でCADAN有楽町でも倉田悟さんと2人展を開催されていらっしゃいます。

根本祐杜・倉田悟二人展 <Infinite Jest> CADAN有楽町

根本:2020年の年末に、突然倉田さんから連絡をいただきまして、一緒に展示をしませんかとお誘いいただきました。倉田さんはペインターで大学も専攻も異なるんですが、過去に一緒に展示をやらせていただいたことがきっかけで知り合い、そこからお互いの展示を行き来したりして、現在まで交流があります。

根本祐杜と倉田悟が過去に参加した展示
<なまの記号たち −ポートレイトの現在形− >小金井アートスポットシャトー2F

実は今、私の個展と同じタイミングで小山登美夫ギャラリーで倉田さんの個展も開催されていて(http://tomiokoyamagallery.com/exhibitions/kurata2021/)、その開催に合わせてCADAN有楽町でも倉田さんの展示を同時開催する流れになったようですが、その際、倉田さんが私も呼んで二人展をしたい、と小山さんに打診していただいたようなんです。私を選んでいただいた経緯は、倉田さんが私の作品を見た時に、もし立体作品を作るなら私みたいな作品を作るかもしれないとの親和性を感じ、いつか倉田・根本で二人展をしたいとずっと思ってくださっていたようなんです。とても嬉しくありがたいことです。倉田さんも私も、それぞれの個展で出し切れなかった作品をインストールすることができたので、個展とはまた違う見せ方の展示になっています。

<Infinite Jest> CADAN有楽町
展示の様子

--根本さんは「PERFECT OFFICE」の個展開催後、すぐにギリシャ・アテネにご留学されました。ギリシャでの生活はどうでしたか。

根本:当初は1年くらいの予定で考えていましたが、コロナの影響で結局約半年くらいの滞在になりました。「PERFECT OFFICE」の個展が終わってすぐの昨年2月中旬ごろに出発して、その時はまだコロナウイルスが蔓延しきっていない時だったんです。中国の方で新型のウイルスが発見されたらしい、くらいの時で、ちょっと咳とかしたら「え、もしかしてコロナ?」みたいな冗談が言えていたくらいの時です。アテネに着いてすぐの頃はギリシャはアシア諸国の情報量よりもさらに情報が少なくて、「東アジアで新しいウイルスが蔓延しているらしい」くらいのテンションで、日本は大丈夫なの?とか聞かれていました。それから程なくして、日本全国でトイレットペーパーがなくなるとか、そういう話を聞いて「面白いことになってるけど日本にいなくてよかった」とか人ごとだと思って呑気に構えていました。

アテネ国立芸術大学滞在中の様子

ところが突然、ギリシャ政府が「ロックダウンします」と宣言して、あらゆるところが急に閉鎖されて、大学ももちろん閉鎖されました。本当についさっきまで普通の生活をしていて、誰もマスクとかもしていなかったところに突然のロックダウンで、あまりにもいきなりだったので冗談かなと思って訳がわからず、報道とか見ようと思うんですが全部ギリシャ語だし、結局詳しい理由がよくわからないまま部屋に閉じ込められてしまいました。なので、大学には滞在中一ヶ月くらいしか通えなかったんです。
ギリシャのロックダウンはとても厳しくて、生きていくのに必要な時にしか外に出られませんでした。例えば食料品を買いにスーパーに行くとか、ちょっとした運動をするとか、薬を買いに薬局に行くとか、健康を損なわないために必要な行動の時にのみ外出が許されていたんです。その上外出する際には<外出許可証>の携帯が必須でした。許可証にはその外出する日付と、何時から何時まで出ますという時間の記載も必要でした。もしその許可証がないと、警察に200ユーロ(約25,000円)罰金を支払わなくてはいけませんでした。
私は公園で日向ぼっこをしていた時に、実は一回警察に捕まったことがありました。その時許可証は持っていたんですが、日付を記入し忘れていて、パスポートナンバーを控えられた挙句、罰金の支払いを命じられたんです。私は罰金を本当に払いたくなくて、逃げました。

根本祐杜による<外出許可証>のドローイング

アテネ滞在中の様子

--パスポートナンバー控えられていたんですよね!?

根本:控えられましたけど、その時は追ってこなかったんです。のちのち請求でも来るのかと思っていたんですが結局何もなかったですね。結構適当な警察だなと思いましたが、私が住んでいたところは移民街・風俗街みたいなところで、警察的にも面倒なことに巻き込まれたくないみたいなことが多分あって、罰金もらえるならもらっとこうくらいの姿勢だったんじゃないかと思います。逃げるといっても急に逃げるとかではなくて、徐々に後ずさりしていって、目を離した隙に私が消えてる、みたいにして逃げました。忍者みたいですよね(笑)。

--無事に帰国されてよかったです。ロックダウン中は何をされていたんですか。

根本:オンラインで大学の授業などもありましたが、いかんせん全部ギリシャ語なので何もわからなかったです。英語だとしてもよくわからなかったとは思うのですが、なのでオンライン授業には一切参加せず、家で絵を描いたり、ラップ制作をしたり、散歩中に映像を撮ったりしていました。

ロックダウン中の根本の制作の様子

ロックダウンは2ヶ月くらい続いたんですが本当に家にいるしかなくて、家でできることをしていました。また、私の家はアパートの一階だったのですが、地下に家族が住んでいまして、そこに住んでいるおばちゃんがロックダウン中、情緒不安定になってしまい、ギリシャ語で大声で騒ぐパフォーマンスを夜中とか関係なく繰り返していたんですが、そのおばちゃんの怒号を音声収録したりして制作していたラップの素材などに使わせてもらいました。上の階の住人とおばちゃんとのリアルファイトなどもベランダから鑑賞していました。

滞在先のアパートの下階風景

そのような家にいたということもあり、何かを生み出す気力みたいなものが24時間、常に湧き出ていて、それで絵本とかを作っていました。毎日ドローイングも描くこともしていたので、なんとなく絵の方向で頑張りたいみたいなという気持ちが強くなりました。
「PERFECT OFFICE」で大きな土の山を作って、自分の身体的なスケールを超えたものが出来上がった時に、これからはそういう大きな仕事ではなく、机の中で完結するような作品を作っていくのかなという気持ちもありました。

日本人は誰に言われるとかでもなく、相手や環境のことを考えてこういう状況下ではマスクをしたりするじゃないですか。でも向こうは規制されない限りはそういうことは誰もしなくて、今はわからないですが少なくとも当時は誰もマスクとかしてなくて、ロックダウンとかで国を挙げて強制的な政策を打ち出すほか人の行動を制限する手段がないんだと思うんです。それでロックダウンが明けて、通常の生活に戻った瞬間が6月頃にあったんですが、ロックダウンとはなんだったんだろう、みたいなレベルでみんな普通の生活に戻りました。明けて次の日の夜はアテネ中の人が夜通し街の中で踊っているみたいな状態になっていて、街全体がクラブみたいになっていたのですが、それをみて複雑な気持ちになりつつ、これはまたロックダウンするなと思いました。それで現在はやっぱりロックダウン中ですね(笑)。

ロックダウン開けてすぐのアテネの街中の様子

--海外でのロックダウンの経験はまずほとんど経験することがないと思いますので、ある意味貴重な経験ですね。実際部屋の外に出られてからは何をされましたか。

根本:結局私がギリシャ滞在中は、学校が再開することはなかったので、ギリシャの遺跡など、ギリシャ人の友達にいろいろなところに連れって行ってもらいました。彼らには感謝しかありません。将来がどうなっているかわからない刹那的に生きている人たちと一時的であれ時間を共有できたのはとてもいい経験になりました。また、交換留学先であるアテネ国立芸術大学の学生の作品をたくさん見ました。めちゃくちゃでどれもとても面白かったですね。
私はクオリティが低いものにすごく興味があるんですよね。そのクオリティというのは、作品の全体的な<クオリティ>というわけではなくて、側がしっかりできていないというか、力が入りすぎていない作品みたいなものを言いたいのですが、そういったものをギリシャではたくさん見てきました。言ってしまえば下手くそな作品で、でも作者は下手くそなことに気がついていないというか、ナチュラルにそれを作っていて、もともとそういう気質みたいなものが私自身の中にもあって、それが面白くて自分の制作にも良い影響があったように思います。海も行きましたしね。

また、ロックダウンが明けてからは完成した絵本を製本して、アテネの友達やら、通行人に絵本の読み聞かせを勝手に行なっていました。今考えると謎の行動でしたが、当時は絵本作家として今後活動していくのかなという気持ちがあったので、英語もよくわからない状態でしたが現地の人に、一丁前に絵本の感想を聞いたりしていました。

制作した絵本

根本が作った絵本の読み聞かせの様子

アテネの人はもしこの六本木とかに来たら(*インタビューは六本木にて行われました)、綺麗で整然としていてびっくりすると思います。アテネは街全体が汚くて、現地の人は服とかもボロボロの服だし、私が滞在していたビクトリアという場所なんかは、難民・移民も集中して住んでました。逆に中心地の郊外だったり離れた島に行けばきれいだったりして、郊外と中心地では違う国なのかなと思うくらい、格差みたいなものを感じました。

アテネ・ビクトリア地区と郊外の様子

私はその一番治安が良くないと言われていた中心地・風俗街に住んでいましたので、現地の人に「なんでそこに住んでるんだい?」と良く聞かれましたね。
住む場所はもともと、大学から部屋のリストみたいなものをもらって選べたんですが、私が留学が決まった時にはいずれも満室になってしまっていてどうしようかと思っていた矢先、そのリスト内の部屋のとあるオーナーの友人が一室紹介できると言ってくれて、それでギリシャに出発する直前にギリギリそこに落ち着きました。なのでその部屋がどういった地区にあるかとかまでは調べずに行ったんです。
実際現地についたら確かに治安は良くなさそうではあるんですが、あっちからしたら私も仲間というか、移民みたいな括りにはなるので、それほど浮くみたいなこともなく溶け込めました。私はその治安の感じとかもすごく好きで、できることならずっと住んでいたかったです。

--日本にご帰国されたのは昨年9月頃でしたね。そういえば粘土教室をやりたい、みたいなお話を以前聞いたように思います。

根本:看板だけ作ってやってないですね(笑)。自分が住んでいる家を何かのスペースにできたらいいなと思って、私の友達でマインドコーチングを得意とする友達がいるのですが、その人と共同で何か、社会に対して良い行いをしたいねと常々話していました。
帰国のタイミングで、私の家は二階建てなんですが一階部分をきれいにして人工芝を敷いてスペースを作りました。そこでできることの一つの案として<粘土教室>を思いつきまして。私は東京の三ノ輪に住んでいるんですが、三ノ輪には小学校とか幼稚園がいっぱいあって、子供達に何かするというのが結構いいなと思っていて、それで何かやりたかったんですが、コロナの状況だったりとかこの4月からの活動など、ちょっとわからないこともあって、今はまだ具体的に動かしてはいない状態です。いずれは粘土教室なのかマインドセミナー教室なのかわかりませんが、何かしらの教室を開いて社会に還元できたらいいなと思っています。

粘土教室(仮)の看板

--今回の2つの展覧会は、ご自身のキャリアの中にどのようなインパクトがありましたか。

根本:Token Art Centerでの個展、CADAN有楽町の二人展と同時進行して進めていましたが、自由なペースで進めていけるスペースと、一方でいわゆるコマーシャルギャラリーと、指示やスタンスみたいなものがそれぞれ全然違って、その違いがとても面白かったです。Token Art Centerは搬入日に作品を見せて、それまでは何がインストールされるか詳細には私が共有していなかったり、展示期間中に作品を追加したり、ギリシャロックダウン時に毎日描いていたドローイングで作った日めくりカレンダーを追加で作って売り出したり、自由度が高くて作業がしやすかったというのがあります。対してCADANは作品リストをだいぶ前に送らないといけないとか事前に準備することも多く、作品はインスタレーションではなく、台座を用意するので<置けるもの>にしてくださいなど指定が細かくありました。客層も全く違うし、来客者数とかも違くて、スタンスが異なる場所で展示を同時にできたというのは、どちらもすごく良い勉強になりました。

--根本さんは今後どのように制作・作品を展開されていくんでしょうか。

根本:今後はイラストレーターとして活躍できたらいいなと思っています。「PERFECT OFFICE」の<NEW SHIT PRESIDENT>を作った時や今回の<ナッシングアットオールマン>の時もそうだったんですが、ああいった大型作品を作り終えた後に、毎回もう終わりかなという気持ちになります。しかも今回の棒人間は作っていた時に事故に遭いまして、<ナッシングアットオールマン>の手を石膏型で作っているのですが、それを<A・M picnic>の棚に設置していた際に頭の真上にちょうど落ちてきまして、それがめちゃくちゃ痛かったんです。記憶が飛んだかと思いました。実際何か大切な事柄を飛ばしてしまったかのように思うのですが、それがなんなのかいまだに思い出せずにいます。それはそのまま<A・M picnic>にて展示しているのですが、そんなこともあって、彫刻は今回限りなのかなという気持ちですね。とは言え、いずれまた作りたいものが思い浮かんだら何か作ろうとするのかな、とは思うんですが(笑)、今はイラスト作品を作っていきたいと思っています。
今回の個展前はずっと実家で制作していたのですが、手が落ちてきた日に、両親と一緒に晩ご飯を食べていて、今まで彫刻作品をメインに作ってきたけど、今後はイラストレーターになる、と両親に宣言したところ、両親はなんだか喜んでいました。実家には大型のよくわからないものがたくさん増えて次々置かれていって、しかも、おそらく私が、手が降ってくる事件や失明寸前まで溶接を繰り返す荒業などなど、作品を作っているところを見守っていたところもあったと思うので、イラストレーターへの転向は歓迎できることが多かったのではと思います。

また、「PERFECT OFFICE」の時はメタ賞レースをパフォーマンスとして開催しましたが、Tokenの個展ではメタトークショーを配信しました。彫刻ではないメディアを通して、自分自身が人前に出てパフォーマンスするという、今までの自分の制作とは違う面白いものができるのかなと、そんな可能性みたいなものが見えました。発表などはまだ未定ですが、現在ドキュメンタリーのような映像作品も制作されています。

PERFECT OFFICE トークショー <NAF賞> の様子
【NAF賞全編はこちらからご覧いただけます】

Token Art Center トークショー の様子
【Token Art Center トークショー全編はこちらからご覧いただけます】

それから、最近はマルチプルにグッズのような作品も作っていたりして、私のHP上で販売していたりします。例えばアーティストの鷲尾怜さんと一緒に以前から作っている本<Special Shit President>や、今回の個展に際して作った<日めくりカレンダー>などです。

<Special Shit President> by 根本祐杜 + 鷲尾怜
¥38,000-

<日めくりカレンダー>
¥36,500-
【いずれも購入はこちらから】

今回の2つの展示の後は、5月1日(土)から6月13日(日)京都・VOU/棒ギャラリー(http://voukyoto.com/)でグループ展を予定しています!今後も活動の幅を広げていけたらと思っています!

開催概要

根本祐杜個展「ナッシングアットオール」
会期:2021年2月20日(土)~2021年3月21日(日)12:00~19:00 *土日祝のみオープン
会場:Token Art Center(東京都墨田区東向島3-31-14)
http://token-artcenter.com/current.html

根本祐杜 × 倉田悟「Infinite Jest」by Tomio Koyama Gallery
会期:2021年2月23日(火・祝)~2021年3月14日(日)
時間:火−金 11:00~19:00/土・日・祝 11:00~17:00
定休日:月(祝日の場合は翌平日)
会場:CADAN有楽町(東京都千代田区有楽町1-10-1有楽町ビル1F)
https://cadan.org/cadanyurakucho-tomiokoyamagallery/

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根本祐杜 | Yuto NEMOTO

1992 千葉県生まれ
2015 日本大学芸術学部美術学科彫刻コース 卒業
2017 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻 修了
2018- 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程 在籍
2020 アテネ国立芸術大学 交換留学

個展
2021 「ナッシングアットオール」Token Art Center(東京)
2020 「PERFECT OFFICE」AOYAMA STUDIO164(東京)

グループ展
2021 「Infinite Jest」CADAN有楽町(東京)
2020 「渋谷パルコ陶器売り場」Oil by 美術手帖(東京)
2019 「コミテコルベールアワード2019」東京藝術大学美術館地下1階(東京)「東風」武蔵野美術大学FAL・東京造形大学CSギャラリー(東京)、「こねられない粘土のマインド」上野の森美術館ギャラリー(東京)
2018 「CAF賞2018入選作品展覧会」代官山ヒルサイドテラスF棟ヒルサイドフォーラム、「ビーナスを綴じる」The Art complex Center of Tokyo(東京)
2017 「なまの記号たち−ポートレイトの現在形−」小金井アートスポットシャトー2F(東京)、「approach to the front」COCONANI左←→右(東京)、「ゆるんだ遠近法展」COEXIST-TOKYO(東京)、「東京藝術大学卒業・修了制作展」東京藝術大学上野校舎(東京)
2015 「東海さるくレジデンス」宮崎県延岡市リバーパル五ヶ瀬川(宮崎)

賞歴
2018 「CAF賞2018」最優秀賞
2015  日本大学芸術学部長賞

パブリックコレクション
2015 「根本祐杜先生像」山梨県笛吹市大垈いやしの杜公園 永久設置

# ARTISTS CAF AWARD

Contemporary Art Foundation