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Artists #19 星野陽子

5月31日より、星野陽子さんが東京・ルミネ新宿にて作品を発表されています。星野さんはCAF賞2018(https://gendai-art.org/caf_single/caf2018/)で入選され、現在は東京を拠点に作家活動を行っています。今回の展示は「LUMINE meets ART AWARD 2020-2021」にて準グランプリを獲得された星野さんの受賞者展で、ルミネ新宿 / LUMINE2・2Fサラベス横ショーウィンドウで6月13日まで開催。本展のお話を中心に、星野さんにご経歴や制作活動についてのお話を伺いました。


--「LUMINE meets ART AWARD 2020-2021」準グランプリ、獲得おめでとうございます。今回のアワードの講評を拝見させていただきましたが、審査員の小山登美夫さんから「星野さんのインスタレーションは絵画のなかから生まれ、実際の空間に展開される、その二次元と三次元の行き来が楽しみです。」とご講評いただいています。CAF賞にご応募いただいた作品もまさに<二次元と三次元の行き来>をテーマにした作品だったかと思います。

星野:ありがとうございます。今回LUMINEで賞をいただけたのは、作品の力だけでなく、自分がやっていることをきちんと整理して言葉にできたからだと思っています。CAF賞入選の時から自分がやっていることは変わっていないんですが、当時は私が何を作っていて、それを人にどう説明するか、みたいなことが全然できなかったんです。
卒業して一度会社員になったせいもあるのか、客観的に自分と作品を捉えること、プレゼンする力ができて結果につながったかと思います。今回はその点も含めてお話ができるかと思います。

私は日頃生活している中で、自分の身の回りにあるもの、例えば重なった洋服とか、洗面台に置いてあるたくさんのシャンプーボトルとか、そういうものに対してスケール感をとても感じます。山積しているものが、山とか大きなビルと見えるんです。それから私は美術予備校時代から、静物画を描くことがかなり好きでした。絵画制作の中で基本中の基本である、<ものを見て描く>というのが私は好きなんです。逆にいうと、私はものがないと描けません。私の作品の場合、個々のモチーフそれぞれ意味を持たせるとかではなく、自分の中でイメージするものに合った、たまたま周辺にあるものを使って並べて、その偶然を楽しみながら正面性を探し出し、出来上がったものからイメージをさらに切り取って絵にしています。その絵に変換する作業を行なった時に、自分の色や形などを作り出すレイヤーが生まれたり、際や形が生まれてきて、最初のオブジェクトのスケール感を再現するために、出来上がった絵からインスタレーションの作品を作り上げています。なので、小山さんのおっしゃる<二次元と三次元の行き来>というのはまさにその通りで、私のインスタレーション作品は絵の副産物でもあります。

--星野さんにとって、ものの配置がデッサンなんですね。

星野による鉛筆デッサン

星野:そうですね。これはこの作品のデッサンですが、ここに落ちる影が谷っぽいとか、この隆起は山のようだなとか、想像しながら描いていきます。その後から色の情報が乗ってきます。これは紙なので二次元ですが、それでも奥行き・位置関係が感じられますよね。私はもともと画面がマクロに見えるのかもしれないですが、その奥行きがだんだんスケールの大きいものに重なって見えていくんです。だからこのデッサンは小さい空間とも言えるし、広い風景とも言えます。
一方で、<ものがないと描けない>という私のやり方は、学生時代のコンプレックスでもありました。ある時教授に「もの見て描いているだけなんて、予備校生みたいだからやめろ。」と言われたことがあって、少し自分で気が付いていたこともあったので落ち込んでしまいました。そんなこともあり、当時は自分のやり方に自信が持てなくて、技法を突き詰めるといったこともやらないままでした。
しばらく時間が経った頃、大学で<マケットを作りなさい>という課題が出ました。私は街中を歩いてモチーフを探していたんですが、大きな2つのビルの間を通ったんです。その時に、「赤いビルと黄色いビルがあったら、その間の空間は反射でオレンジ色になるのかな」とぼんやり思ったりして、それをそのまま絵描いてみたところ、なかなか良いものが出来上がったんです。その思ったことをメモのようにドローイングしてからマケットに起こしてみたところ、自分の絵画空間の中の出来事がすごくしっくり整理できたんです。
その絵を見て、自分のスケールでそのオレンジの空間を見てみたいと思い、大きなインスタレーションを組みだしたというのが三次元(=インスタレーション)作品の始まりです。インスタレーション作品の中には自分自身が入っていくこともできるので、自分の絵の中に入っていく感覚が得られてそれもすごく気持ちよかったんです。

最初に作られたインスタレーション作品・安宅賞受賞作「Thing // Thing(2014)」

今回、LUMINEの展示で出展する作品は、アメリカにある「サルベーションマウンテン」をモチーフにしています。過去、実際に現地にも赴きました。こういう砂漠っぽい・山っぽい、みたいなものを自分の空間に落として再現した作品を作っています。

アメリカ・ロサンゼルス中心部から車で3時間ほどの砂漠地帯にあるサルベーションマウンテン

学部生の時に石橋財団の海外渡航プログラムに通って、助成金をいただいてアメリカに初めて行きました。何か漠然と大きいものが見たくて、その審査のプレゼンの時に「アメリカを横断します!」と宣言したんです(笑)。それで助成金いただいて2ヶ月ほどアメリカに行き、何回か死にそうになりながら、見たかった景色をたくさん見たんです。

アメリカ滞在時の様子

自分にとってはこの山が、さっき冒頭でも話したような重なった洋服・シャンプーボトルとかを彷彿とさせるんです。アメリカの雄大な自然の景色もとても感動しましたが、煌びやかな街・ラスベガスの滞在も本当に楽しかったです。それでアメリカから帰ってきてからはこんなインスタレーションを作り始めました。

アメリカから帰国後に学内で発表した展示「America(2016)」の様子

--全然変わりましたね!

星野:はい、全然変わりました(笑)。光の反射とか、音とか、そういうものもちりばめ始めました。一部の壁面にグランドキャニオンの映像を投影しているんですが、その映像がまた反射して空間全体がアンビエントされた雰囲気になったり、一方でラスベガスをそのまま持ってきた!みたいなキラキラなものを配置して、空間の中の対比みたいなのがたまらないなと。その頃に「こうしなきゃいけないみたいな硬さがなくなって、遊びが降ってきたね。」と言われて、自分の中でもステップアップしたタイミングだったと思っています。
このインスタレーションの中にはカツラとかカバンとか様々なものが置かれているんですが、そのものたちは本来持っている個性みたいなものが消され、インスタレーションの中における<色>や<形>の一部になっているんです。その<ものの解放>と言えることが私は結構好きで、絵を描いている感覚と一緒のように思うんです。しばらくはそれが楽しくて、学部の卒業制作もその延長の作品を作りました。

2017年東京藝術大学卒業制作展示「SHORT CIRCUIT PARTY(2017)」

私の作品はよく「写真は良い」と言われます。それが自分の中で大きな課題でもあって、実際のインスタレーション作品を見ると、強度が弱いと言われてしまったりします。私は作品を構成するのであれば、素材はなんでもいいと思う節があって、例えば四角い形のものが欲しいと思ったら発泡スチロールでもいいし、紙でもいいし、最悪四角ければ象牙でもいいわけです。ものの耐久性とかそういったことを考慮していません。なので置いてあるものが絵具のピースでしかなく、画面で見た時に黄色が欲しいから黄色とか、いい意味でも悪い意味でも本当に絵を描いている感覚でインスタレーションを構成しています。

--星野さんは油絵科ですもんね。

星野:そうですね。インスタレーション作品を作る前は油絵をよく描いていました。

<Untitled> 2014 / キャンバスに油彩 / 1620 × 130.3cm

この作品は私の部屋を描いているんですが、実際は全然こんな色をしていません。この空間の配置に倣って、私が思うように色を並べていった結果の画面がこの作品です。絵画作品もよく見るとボコボコしていたりサラサラしていたり、位置の差みたいなものを絵の具の質感で出そうとしているので、そういう意味ではインスタレーション作品につながっていくようにも思います。

小林正人教授による課題で作られたインスタレーション作品「Drawing performance 」

これは学部時代に小林正人教授から出された課題で作った作品です。小林教授は学生一人一人に異なる課題を出して、学生はその課題に沿って作品を作るという授業をしました。ある人は<山に閉じこもって作品を作ってくる>とか出されていましたが、私の場合は「○日の夕方に一人でポートフォリオだけ持って大学に来なさい。」と言われて、実際にその日大学に行くと本当に教授にポートフォリオだけ渡して帰る流れになりました。でも私以外の学生がなぜか別で集まっていて、何かをしている様子だったんです。帰り際、小林教授に「明日の朝9時に改めて大学に来なさい。」と言われて、よくわからないなと思いながら次の日また行くと、100円商品200点がギャラリースペース内に陳列されており「これだけを使って4時間でインスタレーション作品を作りなさい。」と(笑)。どうやら前日に、ポートフォリオを受け取った教授は私以外の学生と出かけて、私の作品イメージに合う商品を200点ほど買ってきたようなんです。

小林教授と学生が星野の作品制作のために実際に購入した商品約200点分のレシート

教授の意図としては、「星野はインスタレーション作品を作る前の段階でパイプを塗ったり、アクリルを用意したり、<もの>を用意してしまっている。その上一つ一つがでかい。だから、小さいもので、自分が思いもしないもので即興性・偶然性を楽しんで作品を作りなさい。」と言うことで、この課題になったようなんです。小林教授の言うように、私は作品作りの時になんでも用意してから作っていく節があるので、この課題は私にとって地獄で、結局4時間というタイムリミットをぶっちぎって夜9時くらいまで作業してしまったんですが(笑)、結果的には良い作品が出来上がりました。小さいものをつなげることで面にできるとか、そういう学びもあってとても楽しい課題でした。

--さすが小林教授ですね。星野さんをよくわかっていらっしゃいますね。

星野:そうですね。藝大は授業ではよく学生が放置されてしまうとか言いますが、私はその中でも気にかけていただいた方かもしれないです。この課題に限らずたくさん学びがありました。
藝大にいた時、周りの学生は海外の現代美術の作品をよく見たりコンセプトなどをしっかり考えていました。作品についても展示についても、本当によく考える。でも私は左脳的に考えられないんです。これは反省点でもありますが、作品を鑑賞するということもよくできていなかったと思います。どちらかというと右脳的に「あ!目の前にこんな面白いものがある!」とか言って、それをそのままくっつけてピンクに塗って、みたいな(笑)。すごく感覚的に作品を作ってしまうんです。なので<考えられない自分>というのがずっと割り切れなくて、とてもコンプレックスでした。難しいことが考えられていない作品は評価されないんじゃないか、とか思ってしまっていました。でも一方で、ただ単純に「この黄色がキレイ!」といったプリミティブな美術の喜びというのは、難しく考え抜かれたものよりも圧倒的に輝く瞬間があって、結局はそれも大事なことなんじゃないかと思うようになりました。
今回のLUMINEはショーウィンドウスペースでの展示なんですが、ショーウィンドウって、別に美術展示でなくてもそもそもポップでカワイイものが飾られているじゃないですか。私も、私のインスタレーション作品は正直「ポップでカワイイね」くらいだと思っているんです。ただ、この作品がどこから生まれたのかとか、絵を見てもらった時にインスタレーションではこうなったのか、という発見があったら面白いので、実際に自分の絵の中を見てもらう感覚で、目の前のインスタレーションの背景が想像できるような構成ができたらと思っています。なので、そういったことを自分で深めていくためにも今後はもう少し絵を描きたいなと思っています。

--数年前に、都内で星野さんの絵画作品だけの展示を拝見したように思います。

絵画作品のみで構成された展示「ORANGE VIOLET」の様子

星野:はい、展示しました。でもあの時はそういう意識で作って展示したわけではなかったです。その時の絵画は写真を見て描いた作品でした。今振り返るとちょっとやりづらかったなと。CAF賞の時に出した作品でも同じことが言えるのですが、写真を見て描いてしまうのは私にとってすごく作業しづらく、なかなかいい絵にはならないんです。理想はやっぱり最初にイメージをモノで組んで、それを見ながら絵におこし、その絵画をもとにインスタレーションを構成していく、の流れです。CAF賞の出展作品はまたどこかで再挑戦できたらいいと思っています。

CAF賞2018入選作品「INTERSECTION」
写真:木奥恵三

とはいえ「なんか違うな」という感覚もやってみないとわからないわけで、どんな作品も展示も全部やってみてよかったと思っています。特にこの恵比寿の展示は私の知っているところではない文脈からのお誘いだったこともあって、自分にとっては貴重な体験ができた展示の機会でした。

--星野さんはご自身の中で行きつ戻りつしながらも、きちんと消化して次につなげていく強さがありますね。

星野:それしかないんですよね(笑)。泣き言言ってないで一人で進むしかない!みたいな。話はちょっと変わりますが、私の美大在学当時はなんとなく学生の中でグループができていて、特定のメンバーが固まって活動するような、それも男の子で集まるって印象が多かったんです。みんな普通に友達だけど、それこそ難しいことを考えている人たちだし、美術史もろくに勉強してない私はどこか入りづらい感覚がありました。自分は彼らの友達ではあるけれど、作家としては認められていないかも…的な(笑)。
実際はそんなことはないんですが、それでなんとなく一人で戦っていくべきなんだろうなって思って、活動の場を外に求めてコンペに出していた気がします。コンペに出すとそこは当然フラットな評価軸になるわけで、一人とかコレクティブとか、男・女とかでなく、<作品>で評価してもらえる。私の場合はそれが支えでした。
実はCAF賞は2017年にも出したんですが、その時は2次審査止まりで…それでレセプションに顔を出して、当時審査員だった白石さんに「なんで落としたんだ!」って言いながらポートフォリオを見てもらってその場で作品を買ってもらったり(笑)。賞は取れなくてもそういった出会いや繋がりのきっかけが生まれるから、コンペは大切なチャンスでした。また、卒業後制作を続けていくために、何か評価やアワードが欲しかったという理由もありましたね。きっとコレクティブに属していたら、出会いの場もチャンスも人数分倍になって増えるし、私にはそれがない分積極的にいきたいという焦りもありました。

--今回LUMINEのアワードにご応募された経緯もそういった理由がベースだったりするのでしょうか。

LUMINE meets ART AWARD 2020-2021準グランプリ受賞作品「SALVATION MOUNTAIN CITY」のマケット

LUMINE meets ART AWARD 2020-2021準グランプリ受賞作品「SALVATION MOUNTAIN CITY」展示の様子

星野:いえ、今回応募したのは「展示がやりたかったから」です。会社で働き始めてからももちろん作品作りはしていましたが、何か締め切りだとかゴールがないと結局やらなくなってしまう性格で、作る動機が欲しかったんです。あとはどこかで「星野は作家活動をやめてしまったんだ。」と思われたくないっていうプライドの面もありましたね(笑)。

私は会社員になって半年くらいしてから四谷未確認スタジオ(http://yotsuyamikakuninstudio.com/)でアトリエメンバーの一人としてアトリエを借りました。ここはアトリエもあるし展示するスペースもあるというので最初は展示の機会も狙っていました。ところが社会人として働き出してからはとても忙しくて、なかなか思うように作品を作れなくなってしまい、どうしても絵のレベルが下がってしまったりして、自信を持って展示させて欲しいって言えなかったんです。とはいえ、何か目標みたいなものがないと制作へのエンジンがかかりにくくなってしまったので、頑張ってLUMINEに応募したという経緯です。
私が入選したCAF賞2018の審査が終わった後白石さんに「星野さんの絵画作品が見たかったよ。」と言われて、それをそのまま鵜呑みにして(笑)、インスタレーションに実感を持てなくなってきていることもあり、大学院の卒業制作展示には絵画を出展したんです。その時はしばらくきちんと絵を描いていなかったこともあって、それっぽくできた大きな絵画2枚、という感じに仕上がってしまい、それを見た小林教授に激怒されてしまったんです(笑)。「絵画をなめるな!」と。その怒りはもっともで、人から言われたことをそのままあまり考えずにこなしてしまったり、そのくせ周りの目が気になってキワだけそれっぽく整えてみたり、そういうのを全部見抜かれてしまったんです。当時は制作を続けるために評価されたい、という気持ちが強かったせいか、軸が他人に向いてしまって、自分に向いていなかったんですね。その後はしばらくなんとなくモヤモヤが残ったまま依頼された仕事などで絵やインスタレーションを制作していたのですが、そのうち四谷未確認スタジオから声がかかって、私としてはリハビリ施設のような感覚でアトリエを借り制作を始め、会社員として働きつつ何かを気にするでなく自由に作って、をしばらく続けているうちにLUMINEとご縁ができたりして、今の流れになりました。

--大学院をご卒業されて四谷でアトリエを借りるまでの約半年間は、いわゆる<社会人>としての生活だったわけですね。その間の時間はどうでしたか。

星野:めちゃくちゃ楽しかったです(笑)。卒業制作展が終わった後に大きな作品制作の依頼をいただいてまとまったお金がはいったのですが、そのお金も一瞬で消えるくらい遊びました(笑)。その作品もエピソードがいろいろあります。入社式の前日の夜に納品先に搬入というスケジュールになってしまい、前日真夜中まで搬入して、そのまま朝は入社式に出たんですが、その後納品先から「この作品の続きを作っていただけませんか。」と言われて、朝9時から17時までは会社で新人研修をして、18時からは納品先に飛んでいってプレゼン、みたいな生活を1ヶ月程度していました。正直かなりきつかったです(笑)。でもそのおかげで会社に染まりすぎないスタートを切れました。
私は学生時代あまり遊んでいなくて、制作してバイトしてコンペ出して、みたいな真面目な学生で、その反動もあってか社会人になってからはお金の余裕もできてためらうことなく遊んでいました(笑)。
卒業してからは、学生時代に得た繋がりが精神的にとても大事な支えになっていました。会社員生活は学生時代に触れていた美術界独特の空気からも離れたところで生活しなくてはいけなかったので、わかりやすいところで言えば新大久保のアートスペース<UGO>(https://www.shinokubo-ugo.com/)などで、たとえば磯村暖くんや、MES(http://mesmesmes.asia/)のかなえちゃん、他にもたくさんの制作を続けている同世代の友達と会っている時は、作家としての刺激だけではなく、もっと本来の自分の志や在り方を受け入れてもらえる気がして勇気をもらえました。正直、今の私には作品が評価される、売れる、よりも自分がどう生きていきたいかが大切で、彼らと一緒にいるとそれを思い出させてくれます。みんな今でも大事です。

--社会人生活を謳歌しつつ、その一方で制作を続けるため四谷のアトリエメンバーになられたり、学生時代の友人と交遊したり、寝る時間はなさそうですが、ご卒業後もたくさん得るものがあったんですね。

四谷未確認スタジオの様子

星野:そうですね。四谷未確認スタジオは私が働いている会社から二駅という立地もあって、その近さがすごくありがたいんです。このコロナ禍で仕事がリモートワークになってから、ここで仕事をすることもできるし、制作は家ではできないし、制作にフォーカスできる場があるのはありがたいことです。私はそもそも「アメリカに行きたい!」という漠然とした夢があって、日本での作家活動はあまりビジョンが描けなかったんです。お金を貯めたい気持ちと、それまでの間もっと美術業界以外の環境に身を置きたいという思いから就活した面が大きいので、対外的な作家活動よりも自分の中で納得できるものを作り、展示の機会を伺えたらいいなと思っていたので四谷は自分にとってぴったりのスタジオです。

卒業後都内で発表した展示「SPARK(2019)」
写真:遠藤文香

--星野さんは、ゆくゆくはアメリカに行きたいんですね。

星野:はい、なんとも言えないですが(笑)。 もう本当にそれだけの気持ちで、アメリカに行ってから先の展望とかはありません(笑)。さっきお話しした石橋財団でいただいた助成金で初めてアメリカに行ったとき、ニューヨークにまた絶対に戻りたいと思って。言語化が難しいですが、私は日本にいる時よりも何かうまく解放できるんですよね。孤独だし、でも本当に多様な人種に溢れていて。そういう全然違うルールの中で、人が自分をどう思うかを気にせずに、というか気にできないなかで、日本では起きないようなハプニングが起きて、それを一つ一つ解決していくためにいろいろな人や物事と交渉したりするのが好きなんです。だから作家活動のため・絵画スキルアップのためにという明確な目的というよりも、自分の人生に勢いをつけるために行きたいな、という感じです。

また、実は今自分が担当している仕事で、アートに触れてこなかった方にアートを教える、といった経験をしています。参加者の方は本当にアートに触れてきたことがない人ばかりなんですが、お題を出すとかなり面白くて良い絵を描いてきたりするんです。「この線は良いですね」と言って褒めると、本人もとても嬉しそうだったりして、そういうやりとりが私自身も楽しいんですよね。
将来の展望としては、美術教育が日本はまだ閉じ気味ですが、アートに興味がある若い層だけでなくもっと幅広い層にタッチして、アートに関わるサービスに携わりたいとなんとなく考えています。海外はそう言ったケースが多種多様展開されているので、そういう展望も含めてやっぱりアメリカ(海外)を見に行く、ということはしたいです。
ただ、今働きながら作家活動をしている中で、会社にいることでいい刺激や距離感を保てている面もあります。実際に、普段は広告代理店でプランナーとして働いているのですが、プレゼンテーションを行う力や意識は会社で身についたモノだと考えています。会社でも周りの人に本当に恵まれていて、いろんな経験をさせてもらえていると感じています。今後もスタイルを変えず無理のない範囲で働きつつ制作活動をしていきたいです。

--日本に留まらない、星野さんの海外でのご活躍もとても楽しみです!

星野:いつどんな形で行けるかはわかりませんが、まずは今の生活で会社員と作家活動を精力的にしていければと思っています。ありがたいことに、今後は友人づてのご縁で飲食店での展示のお誘いをいただいています。絵画にフォーカスした展示をしたいので、計画立てているところです。そういう意味での展示は本当に久しぶりなので、自分がいいと思うものをたくさん描こうと思っています。また、今回のLUMINEの展示はショーウィンドウでの展示なので、普段美術作品に触れていない方でも見られるところにインストールします。今までは絵の中に入っていくような感覚で、自分のインスタレーション作品の中(空間)に入っていけましたが、今回は一側面から見ていただく形なので、ある意味絵画的にご覧いただけるかもしれないです。ぜひたくさんの方にご覧いただきたいです!

開催概要

タイトル:星野陽子 LUMINE meets ART AWARD 2020-2021準グランプリ受賞者展「SALVATION MOUNTAIN CITY」
会期:2021年5月31日(月)~2021年6月13日(日)
会場:ルミネ新宿 / LUMINE2・2Fサラベス横ショーウィンドウ(東京都新宿区新宿3-38-2)
https://www.lumine.ne.jp/lmap/award/20210531/exhibition-2021/

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星野 陽子 | Yoko HOSHINO

1991 神奈川県生まれ
2017 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻 卒業
2019 東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻修士課程 修了

個展
2018 「ORANGE VIOLET」OVER THE BORDER(東京)、「TRANSMIGRATION」銀座レトロギャラリーMUSEE(東京)

グループ展
2019 「東京藝術大学大学院修了制作展」東京藝術大学(東京)、「第20回 1_WALL グラフィック 」ガーディアン・ガーデン(東京)
2018 「CAF賞2018入選作品展覧会」代官山ヒルサイドテラス(東京)「世界の砂を露で洗う The Dust of the World, Washed by Droplets of Dew」(香川)
2017 「天空の芸術祭 TENKU Art Festival 2017」(長野)、「Laforet Market “Lampharajuku”」LAFORET HARAJUKU(東京)「Stardust」東京藝術大学(東京)、「東京藝術大学 × カマタ_ソーコ」カマタ_ソーコ(東京)、「Geidai Under Ground “Shared”」Glass Box Metro Ginza(東京)、「SICF18」表参道スパイラル(東京)、「東京藝術大学卒業制作展」東京都美術館(東京)
2016 「石橋財団海外渡航プログラム学生報告展示 」東京藝術大学(東京)、「ライブパフォーマンス」Yuga gallery・東京藝術大学構内(東京)
2015 「TUNER AWARD 2015 入賞・受賞者展」TURNER GALLERY(東京・大阪・仙台)、「空中にて」アーツ千代田3331(東京)、「安宅賞受賞者展示」Yuga gallery・東京藝術大学構内(東京)
2014 「進級展」Yuga gallery・東京藝術大学構内(東京)、「t bb t bb tt」gallery EGG Roppongi(東京)、「トーキョーワンダーウォール 2014 入賞・受賞者展 」東京都現代美術館 (東京)
2013 「取手アートパス 2013」東京藝術大学美術館(茨城)、「イワナミとびすことホシノ」デザインフェスタギャラリー(東京)

賞歴
2018  「CAF賞2018 」入選、「第20回 1_WALL グラフィック 」ファイナリスト
2015 「TURNER AWARD 2015 」優秀賞、「安宅賞 2015」
2014 「トーキョーワンダーウォール 2014 」入選

# ARTISTS CAF AWARD

Contemporary Art Foundation