NEWS

Artists #25 日原聖子

この度のアーティストインタビューでは、CAF賞2017(https://gendai-art.org/caf_single/caf2017/)にて入選された日原聖子さんをご紹介させて頂きます。日原さんは昨年10月に東京・駒込倉庫にて個展を開催されました。日原さんには本展のお話を中心に、ご経歴や制作活動についてのお話を伺いました。


--日原さんは日本の美大ではなく、チェコ共和国・首都プラハにあるプラハ美術アカデミーにご進学されました。

日原:もともと高校2年生の時に、1年間チェコへの交換留学プログラムに参加したことがありました。チェコ語はとても難しい言語と聞いて学んでみたいなと思ったことがきっかけでした。首都・プラハに滞在しデザイン系の高校に通い、その高校にのちに私が進学するアカデミーを卒業したアーティストが教えにきていて、進学のアドバイスを受けていく中でその存在を知りました。
日本に帰国後は通っていた高校を卒業し、受験浪人も経験しましたが、その間ずっと心の中にチェコが残っていました。でも当時はチェコの美大に進学するという決断ができるほどの自信もなくて、しばらくの間決めかねる時間を過ごしている中、2011年の東日本大震災を経験しました。あまりにも苦しく、しかしその時にもしかしたらここで悩んでいる毎日を過ごすのではなく、思い切ってチェコに行って勉強をすることで外から日本へ何かできるのではと思い、プラハ美術アカデミーを受験し、進学することになりました。アカデミーには6年間通いました。

--恥ずかしながら、私はチェコ・中欧のアートシーンについてほとんど知識がありません。どのような美術が栄えているのでしょうか。

日原:私がアカデミーへ入学した時の初めの印象は、不思議と全体的に色が暗い感じがするなということでした。ペインティングなど、日本は例えば日本画では鮮やかな色彩を使用することが多いと思いますが、チェコで見る色彩はなんとなくグレーっぽい印象で、絵具に白を混ぜているのかなと思った事があります。絵画以外では、学生の間ではコンセプチュアルな作品を多く目にしました。テキストや映像、身一つで展開していくパフォーマンスなど、言葉で説明されない限り理解が難しいものが多かった印象がありますが、ただ今覚えばそれは、とても実験的で、挑戦的なプラクティスだったのだと思います。
チェコには西洋美術史における主要な潮流- キュビズムやシュールレアリズムなど - の流れの影響を例外なく引き継いだ素晴らしいアーティストがたくさんいます。しかしその後歴史的な背景に、社会主義・ソ連の政治体制が長く敷かれる時代があって、その時代は地下活動的なアーティストがたくさん生まれました。コンセプチュアルでミニマムな形態や、アクションアート的な表現、絵画や立体であっても歴史的背景と芸術家たちの関係が滲み出てくる様な作品が多く残されました。その時代を生きた人々が現在アカデミーで教鞭を執っているというのもあって、学生たちにも少なからずその影響はあるのだろうと思います。
今現在は、私の通っていたアカデミーでは積極的に海外からアーティストや批評家を招いて、英語で講義を行ったりプロジェクトを行なっているのをよく目にします。ヨーロッパの中心に位置する国の土地柄の強みもあるかもしれませんが、旧東欧の地域に属すというアイデンティティを持ちながら、積極的に国際的な意味でのアートの潮流をどんどん吸収していっている印象があります。

--CAF賞にご応募いただき、日原さんが展覧会に参加された際は、周りはほとんどが日本の美術大学に通われる学生さんでした。日本の美大生とチェコの美大生の作品の違いに驚いたと思われます。

CAF賞2017入選作品《Talk about yourself - myself》、《Let's talk about your mother and father》
写真:木奥恵三

日原:そうですね、とても違うように感じた気がします。通っていたアカデミーでは1年間に2度、学期末の審査会で自分の作品を発表する機会がありましたが、その学期に作った作品を全て並べて見せる必要がありました。完成させた作品を見せるというよりも、その時までのあなたの実験や思考を全て見せ、説明してください、というような雰囲気でした。CAF賞に参加したことは私にとって初めて東京の公の場で展示をする機会であり、そのことに戸惑いを感じていたことを覚えています。展覧会に参加して印象的だったのは、みんな自分の作品を見せることへ強い意志を持っているのだなということでした。
また他に思う日本とチェコの美大の違いですが、近年プラハ美術アカデミーではジェンダー・イクオリティの意識が非常に高まっていることを感じています。アカデミーには20ぐらいの研究室(絵画、彫刻、版画、インターメディア、修復保存、建築など)があり、それぞれの研究室に15名ほどの学生が所属します。研究室を率いる教員は数年に一度選挙で選ばられなけれないけません。学生も立候補する先生たちのマニフェストを読んだり、演説をきくことができます。最近ではアカデミーの歴史で初めて、女性の先生が学長に選ばれました。

プラハ美術アカデミー 卒業試験の様子、2018 Photo ©︎AVU/R.Dětinský

--日本の美大、というか、日本の社会は、権威ある方がトップに座していると、その方がそのポジションを退くとなるまで非常に長い期間、上の人事が変わらないということが多いです。その不変さによって助長されてしまった、特定の力を持つ人のよくない習慣や振る舞いが、今あらゆる形で問題となって浮き彫りになり、告発にまで至ってしまうケースも見受けられます。一方で日原さんのアカデミーの選抜のシステムは、その時代に合わせてそのポジションにふさわしい方が選ばれ循環が生まれることで、問題が起きた時に解決、あるいは回避できるような流れもあったり、学校にも学生たちにも良い影響がありそうです。

日原:今思うと良いシステムの学校だったんだなと思います。そういったことが普段の学生生活で起きることで、アートだけでなく、目線が広がるというか、自然と社会や置かれている環境にも興味を持つようにもなるのかもしれませんね。アートの外へ興味をもって作品を作る、ということに関してですが、5年ほど前友人が水槽に魚を泳がしたものを作品として提出した年があったことを思い出します。教員からの評価が悪かったと聞きましたが、その友人は環境問題やアニマルライツに興味をもっていることを知っているので、面白い試みだったのではないかなと思い返すことがあります。

《Enviro future》Karolína Vojáčková, 2018 Photo ©︎Karolína Vojáčková
環境/自然の代替物についての思考のため、デジタルプリントされた人工大理石の上に水槽を置きその中に水と3Dプリントで作った岩石をいれ、魚を泳がせたインスタレーションの一部。自然物の代替品や人工的に飼育された動物種は、飼育者としての人間の美的欲求を満たすためのものである。

--CAF賞2017にご参加の後は、プラハに戻られたんですよね。

日原:CAF賞に応募したのは、オランダに半年ほど交換留学へ行っている時でした。あと一年で卒業するというタイミングで、戻ったらそのままチェコに残るか、それとも日本へ帰るか悩んでいる時でもありました。戻って卒業までの一年間をプラハで過ごし、その後の進学は悩みましたが、「日本語で勉強をしてみたい。」と思い、結局日本に戻って東京藝大の博士後期課程に進学しました。私は儀礼と人の共感の関係について知りたくて、そういった人文学や民俗学などに造詣が深い伊藤俊治教授(*2022年1月現在は同大学を退任。)のもとで勉強させていただいていました。私が布や糸を使った作品を扱っていることもあり、そうした人の営みに密接にある道具など、文化人類学的な見方もできるので、そういった紐解き方も勉強できればと思っていました。

--日原さんの作品は人と一緒に共同して制作していく、という作品が多い印象です。

日原:今はいかに他者の存在を織り交ぜていくか、ということが思考の中心にあるように思います。チェコに行ったばかりの当初は入学したのが版画科だったこともあり、家族や街をモチーフに版画を刷ったりキャンバスに作品を描いたりしていました。そのうちに一人で平面に向かうことが悲しくなってきて、その壁みたいなものを、突き破ろうと思ってキャンバスに刺繍し始めました。その中で、チェコという日本で起きる出来事とはおおよそ無関係に思える土地に住んでいることや、他所からやってきて住んでいるヨーロッパで起こっていること、<人の死>について考えるようになり、人やその人をとりまく出来事に関わろうと思う内に、刺繍を用いて人と関わるようになりました。初めはキャンバスに縫い始め、その後徐々に友人や家族に縫ってもらうプロセスへと変わって行きました。アカデミーを卒業する直前に版画の先生に「話し言葉は流動的で、書き言葉はそこに留まるとされているけれど、聖子がやっている縫うということは、その言葉がそこへさらに深く留まっていくことなんだね。」と言われたことを今でもとても大切にしています。

初めてキャンバスに刺繍した作品《 I had a scary dream.》2015 / 110 × 160cm Photo ©︎Seiko Hihara

--そういう意味では図らずも本展では、このコロナ禍にも呼応するような作品が出来上がり展開されているんですね。

日原:いつも、みんなから出る言葉をどうやって物質化したり、留めていけばいいのかを考えて作品を作っています。今回は、遠隔地で同時に同じ花が育つのは面白いかもしれないと思い、何人かの友人や、友人の友人と鳳仙花の花を育てたことがプロセスの主軸になりました。本展のきっかけは、今回の企画進行を手伝ってくれたり、テキストを寄稿してくれている遠藤純一郎さんとの出会いから端を発しています。一年前にとある仕事場で遠藤さんと出会った時、遠藤さんが剥げかけた黄色いネイルをしていて、なぜ剥げかけたままにしているのか聞いたことがありました。私は、少し強い表現をしますが、ほとんど嫌悪に近しい<ネイルが好きではない>という気持ちを持っています。そんな中、ネイルについてもう少しちゃんと考えてみたいなと、遠藤さんと話していました。そのタイミングで、たまたま別の知人から「鳳仙花は爪を綺麗に染めることができるんだよ。」と教えてもらい、もしかしたらみんなで花を育てて爪を染め、<ネイル>や<装い>について考えたら面白いかもしれないと思い、今回の展示の企画へと繋がっていきました。5、6月にみんなに鳳仙花の種や苗を渡したり送ったりして育ててもらい、夏に花が咲いた際に各自家で爪を染めてもらいました。その過程で何を思ったか、装いについて何を思うか話を聞いてみたくて、今夏にはプロセス参加者の話をオンラインで聞く機会を遠藤さんに企画してもらい、<なぜ今の服装をするに至ったか>というテーマで15分ほどそれぞれ話すのを毎晩みんなで聞く、というのを3日間行いました。その話や、イベント前後で私がプロセス参加者のみんなと直接話した言葉を選んで並べたのが会場で持ち帰れるようにしていたこの小冊子です。

《Untitled》Seiko Hihara, 2021 Photo by Masatoshi Mori

--今回の日原さんの展示は駒込倉庫を全館使い、1階は彫刻家の吉野俊太郎さんが個展「Peripeteia」を開催、2階が日原さんの個展会場です。

日原:個展のような、2人展のような形となりました。開催にあたっては2年半ほど前に、SCAI THE BATHHOUSEのオーナーである白石正美さんが「もし広い場所で展示の機会を探しているのであれば駒込倉庫を使っても良いですよ。」とお声がけいただいた事がきっかけでした。ただ当時はすぐに展示をできる自信がなくて、ちょっと時間をかけて考えているうちに今度はコロナになってしまって、なかなか開催までたどり着きませんでした。結局開催に至るまでは2年ほどかかってしまったのですが、その時間をかけたおかげで自分の作品によく向き合うことができ思考が整理することができたと思います。
私は作家性の所在について強い興味があり、作家(自分自身)の主体性を消したいと思って作品のプロセスを構成する側面があります。駒込倉庫で展示準備を進めている中で、一人で展開するのではなくもう一人作家を呼んで一緒に展示をする方が、自分の展示にとってもおもしろくなるのではないだろうかという気持ちが湧き、吉野さんにお声がけをしました。吉野さんの作品に対しても、作家を断定することを避ける様な、もしくはそのことに積極的に言及している印象を受けていたため、一緒に展示ができたらおもしろいものが出来上がるのではと思い誘ってみたところ、一緒にやってもらえることになりました。

Installation view from《Peripeteia》at Komagome SOKO, Shuntaro Yoshino, 2021 Photo by Masatoshi Mori

--本展はそれぞれの作品だけでなく、お二人の合作もありますね。

日原:昇降機にある赤い台座と手袋の作品ですね。吉野さんが昇降機に丁度入るサイズの台座をつくり、「この上に日原さんの作った手袋を乗せませんか。」と聞いたので、良いですよと何も考えず手袋を置きました。でもふと思うと、会場内で台座の上に<置かれている>作品は実はその私の手袋の作品だけでした。それに気がついた時、実はひやっとしたような、強制的に公に晒された感覚を覚えました。でも、吉野さんが考えているのはまさしくその様な台座の強制性なのかもしれません。そうした答えを出さないコミュニケーションの合作だったと思いますが、その点は、吉野さんの思考の一部に巻き込まれた様な、奇妙で面白い感覚があります。

Installation view from《Circle in red》 Seiko Hihara, 2021 Photo by Masatoshi Mori

--今回の個展では協働したあらゆる方の痕跡も見ることができます。コロナ禍で人との接触やコミュニケーションが極端に制限されてしまっている中で、この状況を受け止め、できることの中から前向きに進んで制作していることが感じ取れます。

日原:コロナ禍でできることは限られていて難しいことばかりのように思いましたが、郵便で手紙や種を送ったり、布や糸を友人に送ったりするなど、普段通りの世界であれば行わなかったかもしれないことを沢山できたのは良かったです。一方で今の状況への苦しみや悲しみのようなものが、作品を構成する要素の決定につながっていきました。コロナの状況やブラック・ライブズ・マター、#Me tooのような近年のムーブメントが現代社会の構造を明確に提示してきたと思うと同時に、友人と戦史について学び、その構造をよく理解しようとしていた一年でした。本展に際しては、みんなに花を育ててもらい爪を染めてもらっているのと同時進行で、私は家で絹糸を鳳仙花でたくさん染めたり、絹布を染めたりしていました。その布をスウェーデンの美大でテキスタイルアートを学んだ安達七佳さんへ送り、一緒にやりとりをしながら作品をつくってもらったりしました。他にも、友人にテキストを書いてもらったものを布に転写したものを私が刺繍でなぞったり、他の友人にも刺繍してもらったりするなど、色々な方法で人の手を加えてもらいました。

安達七佳との共同制作の一部。(《Untitled》Seiko Hihara, 2021)Photo by Masatoshi Mori

--近年は女性の権利や立場について、おかしなことや理不尽なことに声を上げる運動や声が世界的に強まってきています。

日原:そうですね。世界中で起こっているさまざまな運動を興味深くフォローする一方で、<女性>という言葉が何を定義するのかわからず、戸惑うこともあります。今年気がつけたことは、当たり前なことなのかもしれませんが、同じ言葉を使ってもその意味はばらばらなのだということでした。この個展に向けて企画進行を一緒に行ってくれた遠藤さんと話したり、安達さんとコミュニケーションを取りながら作品を作っていく中で友達も増え、自分の中の苦しい部分がちょっとずつ解消されていくような雰囲気がありました。言葉一つ一つの意味や、それにまとわる経験をみんなで検証し、それぞれのバウンダリーをゆるやかに解消していくことで、多くのことを学べたように思います。この展示は私にとってとても助けになり、良いステップの一つになりました。

安達七佳、遠藤純一郎との共同制作の一部。(Installation view from《Circle in red》Seiko Hihara, 2021)Photo by Masatoshi Mori

--ジェンダーの問題に限らない、今までなかなかパブリックでは話せなかった個人の苦しみ・傷や経験を、耳を傾けて聞いてくれる人がいるという、本当にちょっとずつですが、そういう環境になってきてはいますね。

日原:SNSが普及したことで誰でも簡単に思うことを発信できるようになりましたが、声が大きい人の言葉は拾えても、見過ごされてしまう声もあるんだろうねと、友人と度々話す事があります。様々な人が様々な意見を持って議論をしている現在は、あらゆる諸問題に向き合う過渡期ですね。

鳳仙花で染めた絹糸の糸巻き《Untitled》

いずれも《Untitled》 installation view from《Circle in red》, Seiko Hihara, 2021 Photo by Masatoshi Mori

日原:現在は東京藝大を休学し、2022年2月からまた母校のプラハ美術アカデミーへ一年間戻り、博士論文のためのリサーチを行います。私は「共感の実践とアート」というテーマのもと、一定の枠組みの中で、人と人の間で何がどのように作用し共感が伝わっていくのか、ということについて思考しています。それは理解する、という意味ではなく、他者の苦しみや何かを自身の内部へ入れ、ある種同調していくというようなことで、私はそのことを<テキスタイルとコミュニケーション>の問題と、<行為とアート>の関わりから深めようとしています。例えば日本だと千人針がその例になりますが、<戦時下>という枠組みの中で、赤い絹糸で<玉結びをする>という行為とその痕跡が集積した布がお守りとなり、言葉ではなく祈りの行為そのものが布へ移り、それが<共感の媒体>として他者へその祈りを伝搬していきます。そうしたテキスタイルを主軸にした共感の伝搬について思考する一方で、チェコの社会主義時代のアクションアート的な動向にも興味を抱いています。それらもまた千人針と同じように、時代的な枠組み内での行為の現れとして捉えられるのではないかと考え、時代・作品・人の関わり合いがどのようにあったのかなどを学び、その土地のその時代下の行為を介した共感の広がりについて参考にしたいと思っています。特に1950年代〜80年代は近隣国との行き来の制限もさまざまに変わり、アーティスト同士の連絡手段や関わり方も時代背景に大きく影響されました。そうした時代の中で残された作品について、例えば今は写真やテキストのドキュメントによって我々は知ることができます。

--次のチェコ滞在はまたさらにいろいろな刺激を受けますね。

日原:そうだといいなと思っています。滞在予定先の研究室の運営を担当している先生はトマーシュ・ドジャドン(Tomáš Džadoň)というスロヴァキア出身のアーティストなのですが、私は彼の作品からとても影響を得ました。彼は社会主義時代とフォークロア(風習・伝承)の関係について思考していて、とても面白い作品を作っています。私は最初の2年間は版画の研究室にいましたが、以降はインターメディアにいました。そこで教わっていた先生がトマーシュだったのですが、トマーシュと初めて面談した時に、「聖子は日本人で、チェコに来て、この国やヨーロッパがどのように見えているかわからないけど、パリで大きなテロ事件が起きたり、EUは崩壊しかけていて、そのことは今後我々の作品に強い影響を及ぼしてくると思うんだ。」と言われました。私はこれまで絵画論といった美術の中の美術の話しか言われてこなかったので、その言葉を受けて「アートと政治を関連づけて話題にしてもいいのか」と初めて気が付くことができました。先ほども少し言いましたが、誰かの死や、会えない人や遠い土地にに対する強い気持ちが制作のモチベーションとなっていた私にとって、その先生に出会えたことは私の重要なターニングポイントでした。

Photo©️Tomáš Džadoň

《FOLK ARCHITECTURE MONUMENT》Tomáš Džadoň, 2007 Photo by Dominika Jackuliaková
スロヴァキアの伝統的な木造の小屋をパネラークの上に移築するプロジェクト。
作家ホームページより:間違いはつくられた。社会主義の都市計画は、素晴らしい田舎を壊してしまった。自分はそのようなユートピア的計画の中で育った。幸運にも自分の部屋からはタトラ山脈(*訳註1)を見ることができた。もしかしたらその四角い建物群は、思うほど悪くなかったのかもしれない。
比率は変わってしまった。家族のための家から、13階建てのパネラーク(*訳註2)へ。自分たちで建てた家から、体制が建てたものへ。

*訳註1:スロヴァキアを象徴する山
*訳註2:社会主義時代に多く建てられた規格の決まったアパートのこと。社会主義時代のチェコスロヴァキアを象徴するもののひとつとなっている。

日原:トマーシュは在学中、私に一番厳しい言葉をかけた先生でもあります。私がコミュニケーションを題材にしたビデオ作品のサンプルを見せた時に「この作品に出てくるのは聖子しかいない。人と関わりたいといいながら、作家の権力性について考えていると言いながら、自分が主人公になるだけの作品で本当にいいのか?」と問われ、何も言えなかったことがありました。彼自身も、家族や、民族や、時代背景など、大きな広がりの中で関係性を見出して作品を作っているアーティストです。厳しいですが、とても信頼している先生です。そうした環境や教員、友人がいる場所にもどり、また新たな発見や新たに人に会えることをとても楽しみにしています。

-

開催概要(*会期終了)

タイトル:日原聖子個展「Circle in red」
会期:2021年10月30日(土)〜 11月21日(日)13:00 - 19:00
  *月・火休廊
会場:駒込倉庫(東京都豊島区駒込2-14-2)
企画協力:遠藤純一郎
制作協力:安達七佳
https://www.komagomesoko.com/

日原 聖子 | Seiko  HIHARA

2017 エラズムス奨学交換留学プログラム・デン・ハーグ王立芸術アカデミー
2018 プラハ美術アカデミー 修了
2019 - 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期過程 在籍

主な活動
2021 ワークショップ/シンポジウム 「Neuroplasticita – sympozium LES」Institute of Anxiety(チェコ)
2020 個展「かりてきた糸 / Borrowed.」TS4312(東京)
    グループ展「1GB」スパイラルホール(東京)
    グループ展「第13回 I氏賞 選考作品展」岡山シティミュージアム(岡山)
2019 個展「Touching there / そこを臨む」TS4312(東京)
2018 個展「 In Between」 IDEÁL prostor gallery(チェコ、プラハ)
    グループ展「 Future Ready 」Kampus Hybernska(チェコ、プラハ)
    グループ展「JINÉ MÍSTO / ANOTHER PLACE」プラハ美術アカデミー(チェコ、プラハ)
2017 個展「Paintings + drawings + embroideries + a small performance」 Bakterie gallery(チェコ、イフラバ)
    グループ展「第4回CAF賞展」代官山ヒルサイドテラス(東京)
    グループ展「Halfway where」grey gallery(オランダ、デン・ハーグ)
    グループ展「Š.A.L.O.U.N」シャロウン邸(チェコ、プラハ)
2016 個展「Setkání/Meetings」 Hidden gallery、 ミール広場(チェコ、プラハ)
    個展「Paintings and graphics,」cafe Mlynská(チェコ、プラハ)
    グループ展「Black box」GAVU(チェコ、プラハ)
    グループ展「The Studio of Restoration Attempts」シャロウン邸(チェコ、プラハ)
2014 グループ展「bitva」Gallery Uffo(チェコ、トゥルトゥノフ)
    グループ展「Bedřichovice nad Temží」Moravian gallery(チェコ、ブルノ)
2013 グループ展「viď!」(チェコ、クロムジェジーシュ)

賞歴
2020 第13回岡山県新進美術育成「I氏賞」奨励賞
2018 「ヨゼフ・フラーフカ賞」(チェコ)
2017 「CAF賞2017」入選
2015 「グラフィカ・ロク 小版画部門」入選(チェコ)

奨学金
2020 「公益財団法人ギオン芸術スポーツ振興財団」奨学生
2017-18  「チェコ政府給付奨学金」

# ARTISTS CAF AWARD

Contemporary Art Foundation