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Artists #20 辻梨絵子

今月1日より辻梨絵子さんが東京・トーキョーアーツアンドスペース本郷にて個展「TOKAS - Emerging 2021『ルリジサの茶』」を開催されています。辻さんはCAF賞2018(https://gendai-art.org/caf_single/caf2018/)で入選、現在は東京を拠点に作家活動をされています。

辻さんはこれまで、音や匂い・壊れやすい材料などを利用したインスタレーションやパフォーマンスで、物事の移ろいやすさや一過性を表現することに挑戦した作品を制作。作品を通じて人々にあまり認識されていない価値観や思想などを、鑑賞者と共有することを目的のひとつとしています。本展では、昨今のコロナ禍で感じる日々の息苦しさを発端とした、心身への様々な外的ストレスから身を守るための方法について、他者とインタビューを通じ考察していく映像作品をメインに大型インスタレーション作品を発表されます。本展のお話を中心に、辻さんのご経歴や制作活動についてのお話を伺いました。

--辻さんは東京がご出身で、学部は京都芸術大学(旧名:京都造形芸術大学、以下京造)、大学院は東京藝術大学大学院美術研究科グローバルアートプラクティス専攻(以下GAP)ですね。関東圏の大学ではなく京都に行かれたんですね。

クラスメイトの展示に使用された自身のポートレート

京造在学中の様子

辻:そうですね。もともとそれほど関東圏の美術大学に通いたい、といったこだわりはなくて、どこに進学しようかなと考えていた時に、美術予備校の先生に、京都もいいよ、と。そのお世話になっていた先生が京造出身で、いろいろ大学について教えていただき、小さい頃から京都に住んでみたかったというのもあって、京造を受けました。結果的には多摩美・武蔵美の油絵科と京造の美術工芸学科の現代美術コース(現・基礎美術コース、写真・映像コースに分科)に受かったんですが、京造に一番惹かれ現代美術コースというところに行きました。そのコースは椿昇教授が立ち上げたコースで、私が入学した当時が第一期の新しい科でした。様々な技術やマテリアルを広く扱いますというコースで、藝大で言えば先端芸術表現科のような感じです。私が入った当時は演劇もやるし、FRP・立体もやるし、写真もやるしで本当に一通り幅広く勉強しました。例えば演劇はやなぎみわ教授が担当、写真は竹内万里子教授が担当で、どのメディアでも専任の教授が教えてくださりとても勉強になりました。また、学内に併設されているULTRA FACTORYも使用できて、専任の技術職の方に教わりました。いろいろなメディアに触れられたことは本当に良かったです。あの時勉強したことは全て現在の制作にも繋がっているので、京都を選んで良かったなと今でも思っています。

京造在学中に作られた展示、ドローイング

--そもそも辻さんが美術の道を歩んだきっかけはなんだったのでしょうか。

辻:保育園の卒園アルバムにはすでに<将来の夢は画家>って書いていたり、物心ついた時から絵を描くことが好きでした。小学生の時はいろいろ習い事をする中で、唯一続いたのがお絵描き教室でした。そこで「大きくなったら美術を勉強できる学校があるんだよ」と教えてもらって、そこに行きたい!と小さい時からその道を目指していました。

辻の保育園の卒園アルバム

高校生になると美術予備校に通って油絵を勉強しました。最初は油絵科を目指して受験したんですが、全く受からなかったんです。びっくりするほど受からなかった。美大受験っていわゆる一般大のような、点数があってボーダーラインがあって、っていう受験と違うじゃないですか。何が良いとされるか明確な指標はないから、受験の時はどうやって勉強したらいいのかわからなくなって、悩んで悩んで迷路に入った気分でした。自分が本当に絵を描きたいのかもよくわからなくなって、結果2浪して、それから油絵科ではない現代美術コースに入ったという感じです。
大学院は藝大のGAPに行きました。京造の現代美術コースは留学生も多く受け入れて交流も盛んで、私はその中でもフランスの留学生と仲良くなり、彼女からヨーロッパは良いところだよ、ヨーロッパにおいでよと言われたことがきっかけで、京造在学中に交換留学制度を使って、半年ほどスイスの大学に留学しました。母が海外で仕事をしている人で、小さい頃から英会話の勉強を大事にしなさいと言われていたこともあって、高校生の時から海外へホームステイをしたり、国際交流に興味があったので、スイス留学をきっかけにより国際交流に興味を深めていきました。

スイス留学中の様子

スイスに留学してすぐの頃は、英語が全然喋れなくてとても苦労したんですが、単位交換制で単位を取ってこなくてはいけなかったので、なんとかこなして頑張りました。その留学では映像やサウンドを集中的に学び、映像編集の技術なども学びました。また、留学中はクラスにたった一人、私だけがアジア人だったことで、人種問題にも興味が湧いたり、日本人としてのアイデンティティを考えるようになりました。

スイス留学時の作品「沈黙する音」制作の様子

アイデンティティについて考えているうちに<無意識の中の自分の文化>みたいなものに気がつき、そういった思想なども含めて美術を学べるところはないだろうかと進学先を探していた時に出会ったのが、藝大のGAP専攻でした。GAPは国際交流をコースの大切なコンセプトの一つとしていますが、一方で留学生向けに日本の文化・伝統美術・歴史についても学ぶ授業もあり、その授業で日本・そして日本人としての私、というものに立ち返り学ぶことができることを知り、GAPに進学をしました。京造の現代美術コースもそうだったように、GAPも私が入学時第一期目のできたばかりの専攻で、教授陣もどのように授業を進めていくのか手探りな感じでしたが、そのおかげで教授と学生の距離がとても近くて、授業のことも制作のことも相談しながら進めることができたので、私はその雰囲気がすごく良くて好きでした。

GAP在学中の様子

--学部・大学院とざっくり分けた時に、全く違うものを学ばれましたね。

辻:そうです。私は継続して同じものを学んでいたことはないですね。京造の現代美術コースも何か一つに特化していたわけではなく、様々に学びました。私は制作においても絵画や彫刻など一つのメディアを作り続けることがなかったので、一時期は壁にぶち当たってしまいました。あれもこれもやりたい!と思って作品を作り続けてきましたが、ある時自分の作品を見返した時に、作品ごとにメディアがあまりにも違うので、私は私としてスタイルを確立できているのだろうか、自分には決まったスタイルがないんだな、とすごく不安でした。正直今でも思っています。作品を作るたびにマテリアルの扱いや技術も異なるので、失敗が重なっていき毎回大変です。

GAP在学中に作られた作品「殻からの脱出」

GAP修了制作作品学内審査の様子

--いわゆる<油絵>などは描かれたことがありますか?

辻:ありますね。美術予備校や学部時代は課題でドローイング100枚、とか描いていました。絵を描くことも好きではあるんですが、ペインターって忍耐力がないとなれないかもなと思うんです(笑)。一つのことを続ける覚悟とか没頭できる力とか、私はそういう忍耐力・集中力は持っていなくて、練習する機会がたくさんある、新しい分野の開拓や技術の獲得が好きなんです。
京造もGAPも在学時、コンセプチュアルな作品についてレクチャーを受けます。作品を見ただけだと全く分からないんですが、コンセプトを聞いてなるほど、となるような、そういった国内外の作家や作品の紹介がたくさんありました。また、京造の授業では自分の作品の背景になるコンセプトをテキスト化する授業がありました。「かわいいから描きました」とかじゃなくて、ひたすら自分の作品に関する文章を書いてモヤモヤしている不明瞭な部分も含めて言語化し、文の構成の仕方を学びました。教授は、「自分の作品を言葉にできないアーティストは、趣味でやっているのと変わらない。」と言っていました。

--CAF賞の審査の点でいうと、書類審査のエントリーの際に作品の説明文を書いていただきますよね。当然審査時はそこも加味されるのでみなさんのテキストを拝読します。確かに「作りたくて作りました」とかだけだと判断が難しくて、もちろんそれだけで良い悪いを決めて落選、とかの安易な話ではないですが、作品が作家さんご自身の言葉で説明されているとより理解は深まるというのはあります。

辻:そればっかりは本当に訓練ですよね。デッサンもデッサンを続けることで腕が上がっていくわけですから、結局テキストもたくさん考えて書くしかないんです。GAPでは特にそういった、アワードや助成金などの書類審査時における書類の書き方を教えてもらいました。一文目を面白くしようとか、審査に通るための文章の書き方を日英でレクチャーされました。すごくやりたくなかったです(笑)。でも実際社会に出てアーティストとして活動していくためには必要な技術なので、今思えば良い授業でした。

--様々なマテリアルの扱い方や留学、コンセプトの書き方などオールラウンドに勉強されましたね。

辻:そうなんですよね、そうなんですが、社会に出たらびっくりでしたね…戸惑いながら、これが社会…?ってなりました。

--何があったんでしょうか(笑)。

辻:19年の春に卒業して、最初に働いたところが悲しいくらいハズレでした。とあるコンサートホールのアルバイトだったんですが、求人情報の欄に<制作活動と両立ができます>と記載されていて、私はそこだけを見て応募してしまったんです。ところが入ったら全然両立ができる環境でなくて、一応定時では帰れるし、週4日くらいの出勤だったんですが、働いている人たちの空気というか、閉塞感がすごかったんです。<制作活動と両立できる>と書くくらいの職場なので、アルバイトとして集まる人もクリエイターやアーティストが多いわけですが、誰一人として制作活動が順風満帆ではなさそうで、「そんな夢みたいなこと無理ですね。」みたいな、暗くてギスギスした空気で溢れていました。私は仕事を始めてすぐに「ここには長くいられないし、いたくない!」と思って、ネットで検索をかけて出てきた公募に上から下まで全部応募していました。何かに通ってここを抜け出さなければと。
公募への応募を続けていたら、<夏の終わり / End Of Summer>(http://www.end-of-summer.org)というレジデンシー・プログラムに通りました。そのレジデンシーはアメリカ・オレゴン州のポートランドで行われる異文化交流のアート・プログラムで、毎年夏に日本人のアーティストたちがポートランドに1ヶ月程度滞在して、一般公開されるレクチャーやプレゼンテーションといったイベントを行う、というものです。私はそれで2019年の夏にアメリカ・ポートランドへ行きました。現地でスタジオを借りて制作できる環境をもらい自由に制作する一方で、ほぼ毎日現地のオーガナイザーがポートランドのアートスペースに連れて行ってくれます。ポートランド自体はとても小さな街なんですが、街中には小規模なアートスペースが無数にあって、そこを見て回れたのでとても楽しかったです。生活費は自分持ちですが、制作費や現地でのプログラム参加にかかる諸経費はすべて負担してもらえます。全てのアーティストの卵にオススメしたいくらい良い機会でした。もちろんポートランド行きが決定した時点で、コンサートホールのアルバイトはやめました。

<夏の終わり / End Of Summer>レジデンシー・プログラム参加中の展示「Virtual Romance」

これは余談ですが、先日私がやめたアルバイトで一緒に働いていた友人に久しぶりに会ったんですが、職場の環境があまりにも悪いから、もしかして邪気があるのではないかとかいって、職場の人が職場内に最近盛り塩をし始めたそうで(笑)、彼女もまもなくやめると言っていました。職場の環境の改善の突破口が盛り塩とは(笑)、本当にやめてよかったと思いました。

--盛り塩はそういう意味の環境改善をするための方法ではないですね(笑)。抜け出せてよかったです。確か、ポートランドと同じ年の冬にもどこかレジデンシープログラムに参加されていらっしゃったように思います。

辻:冬は瀬戸内に行きました。その年は瀬戸内国際芸術祭の年で、レジデンスでなくても良いから期間中は絶対に瀬戸内に滞在したいと思っていたところ、京造時代にお世話になった教授が豊島の住み込みのレストランバイトを教えてくださり、それでそのレストランで働きながら1ヶ月半くらい滞在し、展示の機会もたまたまいただいたりしました。

瀬戸内・豊島滞在中に作られた作品「朋」

その頃はずっと生活でも仕事でも美術に触れることができていたので、やっぱり私も作品作りや展示の発表を継続していきたいなと思っていた矢先、今回の個展につながることになったTOKASレジデンス・プログラムに採択されました。このプログラムは当初、2020年の春にドイツ・ベルリンへレジデンシーする予定だったのですが、コロナの影響で中止になってしまいました。しょうがないとは言え、レジデンスの機会がなくなってしまったことは最初とてもショックでしたが、その代わりに今年の6月にトーキョーアーツアンドスペース本郷で個展をやらせていただく機会をいただきました。

--コロナウイルスの蔓延は本当にあらゆるところに障害を起こしましたね。辻さんはこれからご自身の作家活動をもっと盛り上げていこう!と思ったタイミングでそのレジデンシーが中止、となってしまったので、次の一歩をなかなか出すことができず苦しかったことと思います。

辻:そうですね、苦しかったですね。苦しかったですが、そこまで落ち込んでしまう機会でもなかったです。
大学を卒業してから「作家になるためには、何か大きな公募に通らないといけない」という気持ちをずっと持っていて、作家になるにはこれしか方法がない、となぜか強く思っていました。それが正しいことなのか分からなかったんですが、将来への焦りや不安から、その時はそうするしかない、と思い込んでいました。学生時代は周りに友達も教授もいて、自然とみんなで何か一緒に作るということができていましたが、卒業してからはそういった環境がなくなって、全くの一人になってしまって怖かったんだと思います。ところがポートランドのレジデンシー・プログラムや瀬戸内の滞在などを経て、大きな公募や展示だけにフォーカスを当てるのではなく、身近にいて、一緒に戦っているアーティスト仲間と小さい規模でも何か作って発表する機会もとても大事だなと思い始め、2020年は小規模でも実際に何か活動してみようと思いました。それでコロナ禍の自粛期間中、たまたま京造時代の友人から連絡が来たこともあって、オンラインで一緒に映像作品を作りました。同時に、どこかで一緒に展示をしたいねという話しから、昨年末のBUoYの展示に繋がっていきました。

昨年末に行われたBUoYでの展示「モーニングコール」。期間中、パフォーマンスも行われた。

--今回の個展はどんな展示でしょうか。

辻:もともとはドイツにレジデンスしに行く予定の公募だったので、ドイツと繋がれるような作品を作ろうと思いました。昨年春の最初の緊急事態宣言が明けてすぐに東急ハンズに行って、何か作品作りのヒントになるものはないかと探していた時に、ガーデニングコーナーにドイツから来た植物の種があって、これを育てようと漠然と思ったんです。家に帰ってその植物について調べたら<ハーブティーとして好まれている植物>と出てきて、ではまずハーブティーを作ってみようと思って、花が開いてから花を摘んでお茶を淹れました。

「TOKAS - Emerging 2021『ルリジサの茶』」より映像作品「Borage Tea」の一部

昨年コロナウイルスが最初に蔓延し始めた3~4月って、社会は激動だったじゃないですか。私自身、自分を落ち着かせたいと思う気持ちも強くて、植物を愛でるとかお茶を飲むとか、この植物を勉強しているうちにそういったことに興味が自然と湧いていきました。それから、他の人たちはどのように外的なストレスから身を守っているのかということを考え始め、いろいろな人にその方法を聞いてみようと思い、それが今回出展する作品のプロジェクトテーマになりました。私が今インタビューを受けているみたいに、私がいろんな人にインタビューをして映像作品にしています。がっちりとしたインタビュー映像というよりは、森の中をひたすら歩いているとか、お茶を飲むとか、YouTubeをボーっと見ているような感覚に陥る・見ていて脱力するような映像を繋げています。この映像作品を見て鑑賞者がリラックスするということを狙っています。

「TOKAS - Emerging 2021『ルリジサの茶』」より映像作品「Borage Tea」の一部

映像作品の他には大型のインスタレーション作品もインストール予定です。私自身のリラックス方法は<花を愛でる>なんですが、植物を育てているうちに花道にも興味を持ち始め、花道を想起させるような作品もあります。それからバキュームフォーマーの作品も出しています。これは深呼吸を表していて、呼吸の瞬間をかたどっています。

「TOKAS - Emerging 2021『ルリジサの茶』」より「Bouquet」
写真:加藤 健、画像提供:トーキョーアーツアンドスペース

--近年の辻さんのご活動の中でも大きい規模の展示になりますね。

辻:今回の展示は今までやってきたことを集めてもっとぎゅっと絞った作品を作ったら、よりクオリティが高いものができたかもしれないのですが、今回もたくさん新しいことに挑戦できたので、個人的にはそれがすごく良かったです。自分の作家キャリアの中のステップアップのための展示、と言えます。
実は今年の初め、京造時代の友人からの依頼で舞台美術の仕事をしました。BUoYの展示の時もそうだったんですが、今はパフォーマンスとインスタレーションにもとても興味があり、今回のTOKASの個展も空間そのものを<ステージ>のような意識で捉えていたりして、例えば劇場でいう床にカーペットを敷いたりとか、観客席はここ、みたいな感覚で作品のインストール方法を考えています。そういう空間作りみたいなものもこれからもっと極めていきたいです。展示会場をカーテンで仕切って、その向こう側に花瓶の作品がある状態にしているのですが、そのカーテンも舞台の紗幕として考えていたり、空間全体をどうステージに変えていくか、みたいな感じですね。ありがたいことに今後も舞台美術の仕事の話は来ていて、今回の個展も含め、どのように舞台を作るとより効果的なのか、みたいなことも考えて展示を作っていきたいです。ただ舞台美術の分野で活躍したいわけではなく、ジャンル・マテリアルを超えて誰かと協働で作品作りがしたいという感覚です。

「TOKAS - Emerging 2021『ルリジサの茶』」より「Vace」
写真:加藤 健、画像提供:トーキョーアーツアンドスペース

京都で行われた演劇「GOOD WAR」で辻が制作・ディレクションを担当した舞台美術作品
写真:田中 愛美

藝大の卒制でいまだに心残りなのが、CAF賞の時に出した作品をアレンジした作品を、卒制として出展したことです。なぜ新しいものを作らなかったんだろうととても後悔しています。その時は時間的な問題や、そもそも新しいものを一から作り始められるのかという精神的な焦りもあって、自分が過去に作った作品をブラッシュアップしたものが良いと思って選びました。ところが友人で、かつCAF賞にも出展した落合さん(CAF賞2018)や敷根さん(CAF賞2019)の作品を卒業制作展で見た時に、賞の時とは全く違う作品を発表していて、それを見て自分に対して「あーあ…」と、新しいことをすれば良かったな…と強く思ったんです。

CAF賞2018入選作品「I hope you are happy」
写真:木奥 恵三

卒制は卒業後のキャリアに繋がっていく可能性がある大切な機会でもあるので、その意識が強すぎたのかもしれないです。変に凝り固まって気負いすぎたというか、自分の中の安牌を出してしまったんですね。でもみんながみんなそこまで狙ってきていないというか、やりたいことをやっている人が多くて、それが素敵でした。それからCAF賞の時のレセプション・表彰式の様子とか、本当にたくさんの人が来ていてその環境に圧倒されたこともあって、ぼんやりとしていた<華やかなアートの世界>はもしかしてこれなのか?と目の前に突きつけられた感覚になってしまって、いち早く活躍する作家になるために完璧なサクセス・ストーリーみたいなものを手に入れようとしすぎた、というか。でも、現在国内外で活躍している作家たちも急にそこまで上り詰めたわけではなくて、いろいろな苦労や下積み時代を過ごしてきたわけで、卒業後いろいろ体験したり、様々な人と話をする中で、ローマは一日にしてならないのだと気がつきました。なので、卒業後は怖がらず、新しいことへの挑戦をためらわないようにしようと思ったんです。


--ご卒業後、未来への不安も大きい中で実際に自らあらゆることに挑戦され、着実にキャリアを固めていっていらっしゃいますね。

辻:ありがとうございます。今回の個展でもまたいろいろな人や機会に恵まれると嬉しいなと思っています。今後は今年の年末に福島でグループ展の予定があります。その展示も大きいものではないのですが、今までのご縁があっての面白い展示になりそうです。私の母方のおばあちゃんが福島に住んでいて、おばあちゃんは書道の先生だったんですが、そのおばあちゃんの文字が書いてある石碑を探して綺麗にするというプロジェクトを考えています。家族のための展示とも言えます。その展示には、私が大学院一年生の時に一緒に美術館でバイトをしていた友達と、ドイツに留学した時に知り合った日本人の友人も参加します。その友人も福島、しかも私のおばあちゃんちの近くの出身で、いつか絶対に一緒に展示しようねといっていたので、実際に叶ってとても嬉しいです。ゆっくりではありますが、友人や家族を大事にしながら作家キャリアの道をどんどん登っていきたいです。今回の個展と、福島の展示と、ぜひお越しください。

開催概要

タイトル:辻 梨絵子個展「TOKAS-Emerging 2021『ルリジサの茶』」

会期:2021年6月1日(火)~2021年6月20日(日)11:00~19:00

  *入場は閉館30分前まで、月曜休廊、事前予約制

会場:トーキョーアーツアンドスペース本郷(東京都文京区本郷2-4-16)

https://www.tokyoartsandspace.jp/archive/exhibition/2021/20210403-7034.html

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辻 梨絵子 | Rieko TSUJI

1991 東京都生まれ
2014 チューリッヒ芸術大学交換留学
2016 京都造形芸術大学美術工芸学科現代美術コース 卒業
2019 東京藝術大学大学院美術研究科グローバルアートプラクティス専攻 修了

個展
2019 「MOONS」mamma(香川・豊島)
2018 「I hope you are happy」Prenzlauer Studio / Kunst collektiv(ドイツ)、「Unsere bequemliche Welt」kiosk.6(ドイツ)
2017 「Fictionality」S.Y.P art space(東京)
2015 「Schlaf grosses Schaf」デザインフェスタギャラリー(東京)
2014 「Freakout / Openside」バーホークウインド(京都)

グループ展
2021 「GOOD WAR」舞台美術・京都府立文化芸術会館(京都)
2020 「モーニングコール」北千住BUoY(東京)、「台日藝術家交流聯展 - 動と静の瞬間」新北市立淡水古蹟博物館(台北)
2019 「ALCHEMIC BODY | FIRE . AIR . WATER . EARTH」THE LINE Contemporary Art Space(イギリス)、「Reassessing Material」Sala 1 Centro Internationale d'Arte Contemporanea(イタリア)、「東京アンデパンダン」東京藝術大学陳列館(東京)
2018 「CAF賞2018入選作品展」代官山ヒルサイドテラス(東京)、「Materie Neu Denken / Repensar la Materia」Sala de Exposiciones(スペイン)、「Temet Nosce」Can't complain gallery(フランス)、「マトリックス」アートスペースコンフリ(茨城)、「Winterwerkschau」Marienstraße 7(ドイツ)
2017 「Vi tager intet ansvar5」WAREHOUSE9(デンマーク)
2016 「複雑なトポグラフィー 動態と変化」瀬戸内国際芸術祭・栗林公園(香川)、「THE LAST ASCENT : OMITTED VOICES」アートスペースココノカ(東京)
2015 「ドキドキ国際交流展」cumonoギャラリー(京都)、「PARK」Kumagusuku art hotel(京都)
2014 「複数の二つの点の間の間隔」旧雲ヶ畑小学校(京都)、「意味のない光学」Kyoto graphy(京都)、「□□□:」鑓水青年美術館(東京)、「進々堂プロジェクト」進々堂(京都)
2013 「京都インタラクション」3階プロジェクトルーム(京都)

レジデンス
2019 「End Of Summer」アメリカ・ポートランド
2016 「Silence Awareness Existence」フィンランド・タンペレ

# ARTISTS CAF AWARD

Contemporary Art Foundation