木村 翔馬
Shoma KIMURA
Shoma KIMURA
WEB SITE京都市立芸術大学
「CAF (Contemporary Art Foundation) 賞」は、高校、大学、大学院、専門学校の学生の皆様を対象とした、若手アーティスト育成を目的とするアートアワードとして2014 年より実施しています。4回目となる今年は審査員に白石正美(SCAI THE BATHHOUSE)、藪前知子(東京都現代美術館)、齋藤精一(Rhizomatiks) を迎え、最優秀賞1名・審査員特別賞3名、海外渡航費授与者1名の合計5名の学生を選出いたしました。最優秀賞受賞者には賞金に加えて個展開催の機会を提供いたします。 またこの度、「第4回CAF賞作品展」を10月31日(火)~11月5日(日) の6日間、東京・代官山のヒルサイドフォーラムにて開催いたしました。本展では、集まった数百の応募作品の中から選ばれた絵画、彫刻、映像、インスタレーション、パフォーマンスなどあらゆるジャンルの入選作品を展示、11月3日(金・祝)には最終審査が行われ各受賞作品を発表し表彰式とレセプションを行いました。
SCAI THE BATHHOUSE
1947年東京生まれ。SCAI THE BATHHOUSE代表。慶應義塾大学文学部美学美術史学専攻。89年より青山表参道の東高現代美術館副館長。国際的なアートマーケットを視野に国内外の現代美術作家を取り扱う「白石コンテンポラリーアート」を設立。92年にアートフェア東京の前身となるNICAFを立ち上げた。SCAI THE BATHHOUSEを台東区谷中に開設。一方、谷中の地域の活性化を進め、「カヤバ珈琲」や「上野桜木あたり」を再生。近年、若手アーティストのための実験場として「駒込倉庫」や新しい視点のスペース「SCAI PARK」を天王洲アイルにオープン。
東京都現代美術館
1974年、東京生まれ。東京都現代美術館学芸員。これまで企画担当した主な展覧会は、「大竹伸朗 全景1955-2006」(2006)、「MOTコレクション 特集展示 岡﨑乾二郎」(2009)、「山口小夜子 未来を着る人」(2015)、「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」(2015)、「MOTサテライト 2017春 往来往来」(2017)(以上、東京都現代美術館)など。キュレーションの他に、雑誌等に日本の近現代美術についての寄稿多数。札幌国際芸術祭(SIAF)2017にバンドメンバー(企画チーム)として参加。
Rhizomatiks
ライゾマティクス代表取締役/クリエイティヴ&テクニカル・ディレクター。1975年神奈川県生まれ。建築デザインをコロンビア大学(MSAAD)で学び、2000年からニューヨークで活動を開始。06年にライゾマティクスを設立。建築で培ったロジカルな思考をもとに、アートやコマーシャルの領域で立体作品やインタラクティヴ作品を制作する。
木枠、ビニールキャンバス、ペンキ、油絵具、マーカーペン、マジックペン / 映像、タブレット、ドローイング帳、木材、人工芝
一見非常にそっけなくて、宙ぶらりんで、得体の知れないものに見えますが、そこに何か引っかかるものを感じました。それはおそらく、彼がまずVRを使って絵を描き、これをベースにペインティングを描く、という特異な手法をとっていることに起因するのだろうと思います。VR空間では、たとえば線を引いても重力もなければ質量も持たないといった、現実とはまったく異なる世界が広がっています。木村さんはそんな世界を描きたい、写真の登場によって絵画が変わったように、VRの登場によって変わる、新しい絵画をつくりたいのだと言いましたが、その言葉に強く惹かれました。彼はまだ20歳です。今の感覚ではとらえられない、新時代の絵画を見せてほしいと審査員3人が一致し、期待も込めて最高賞を贈りたいと思いました。
パネル、綿布、アクリルペイント、オイルペイント
シンプルな絵画に見えますが、コラージュやドローイング、写真技法などを駆使しながら、フィギュラティブなイメージと抽象的なイメージを行き来しつつ、3次元的な厚みを巧みに平面上に表現しています。アカデミックに優れた作品ですが、とても美しい絵を描いている、手元に置いておきたいなと思わせる、あえてそういった視点から審査員賞に選ばせていただきました。
コンクリート、アクリル絵具、紙
インターネット上で物質感のない浮遊した共有物となっている絵画のイメージを、コンクリートという物質そのものに還元し、再び絵画に戻すといったような再価値化を試みている作品です。データとしてのイメージと物質の往復感に今の時代のリアリティーを感じました。美術の社会における意味を問うようなスケールの大きい作品をつくっている点も評価して賞を差し上げたいと思いました。
木製パネル、プライマリーサーフェイサー、油性ペンキ、油絵具、麻布
高速道路を黒を基調に描いた作品に初見からハッとしました。インターネットがあたりまえにあって、衛星が打ち上がって真上からの視点で街を見られるようになってという前提のもと、東京がどんどんその形を変えようとしているなかで、人間が創る人工物の美しさといったものが、陰影をつけながら表現されています。今の時代を油画というアナログな表現の対比の面白さもあり選ばせて頂きました。
ネコを題材とした3つのテレビモニターで構成する作品で、発想が非常に面白いと感じました。まだ荒削りではありますが、この機会に海外でもっとたくさんのものを見ていただき、彼のアーティスト性の中に様々な視点や情報、インスピレーションを入れてきていただくことで、若手アーティストのなかでも稀有な存在に成長するきっかけを掴んでもらえることを願いつつ選ばせていただきました。