
六本木『潮』展 読み解きのヒント
東京・六本木で開催中の個展で展示中のシリーズ《潮》は、統計データを使って仮想の地形を作り、社会の姿を捉えようとする試みです。この作品の仕組みと読み解き方について解説します。
この度、現代芸術振興財団は稲田和巳個展「潮」を開催いたします。
稲田は、自身や身の回りの外界を計算機を用いて構造化し、観察することを試みてきました。作品を制作するアーティストであると同時に、背後にあるテクノロジーに携わるエンジニアとして活動することも特徴です。その作品は、稲田が「観測装置」と形容するように、見るもの自身が主体的に読み解き、我々の生きる世界への解釈を見出すことを促します。
本展では、シミュレーションシステムを構築し制作するメディアアート作品の新作を展示します。
『潮』は、社会統計データから生成された仮想の地形を用いて、地理空間に横たわる不可視な流れを考察しようとする取り組みです。異なる切り口で社会を捉えたデータを統合して構築される地形は、多元的で流動を続ける社会の姿を像として捉え、観察と発見の糸口を示します。
1997年、大阪府生まれ。2021年より筑波大学大学院に在籍。アーティストとして、主な活動に「亀山トリエンナーレ2022」(三重・2022)、「CAF賞2021」(東京・2021)、「住人たち 再制作と展示」(茨城・2021)、「つくばメディアアートフェスティバル2021」(茨城・2021)など。その他の活動に「中高生のための研究サポート動画」(ディレクション・2022)、「つくばSKIPアカデミー プログラミング実習」(教材設計と講師・2022)など。
会期:2023年2月18日(土) - 4月8日(土)
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
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19 ショーウィンドウのみ稼働 | 20 ショーウィンドウのみ稼働 | 21 ショーウィンドウのみ稼働 | 22 ショーウィンドウのみ稼働 | 23 開廊 | 24 開廊 | 25 開廊 |
26 ショーウィンドウのみ稼働 | 27 ショーウィンドウのみ稼働 | 28 ショーウィンドウのみ稼働 | 29 ショーウィンドウのみ稼働 | 30 開廊 | 31 開廊 | 1 開廊 |
本日開催
2023年2月18日(土) - 4月8日(土)
木・金 12:00-18:00/土 12:00-19:00/日-水・祝日 休廊
ギャラリーオープン中に、作家が作品のメンテナンス作業を行います。
各展示物は、場所に紐付けることができる社会統計データをそれぞれの地点の「標高」とした、仮想の地形モデルを用いたものです。たとえば地価統計のデータでは、統計が取られた地点ごとに、価格の相対的な高低を地形上の高さに変換しています。得られたまばらな点の間を数理的に補完することで、地形の「地面」ができます。
本展では複数のデータセットを地理的場所によって組み合わせて地形を生成し、その上に水や土砂を思わせる粒子を流すシミュレーションの様子を提示します。経済・環境・情報など異なる切り口で社会を表すデータを複合的に重ねるにつれ、地形は有機的で解像度の高いものとなり、自然の産物のような複雑性が徐々に現れます。
制作にかかる数理的な処理はコンピュータアルゴリズムで実装されており、地形・稜線・粒子の流れは、作家の主観的意思を介することなく生成されています。鑑賞者の目に直接触れることこそありませんが、モデルを生み出しているこれらのシステムこそが、《潮》のまさに主体であると言えます。
主催 | 公益財団法人現代芸術振興財団 |
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グラフィックデザイン | 岡本太玖斗 |
施工 | HIGURE 17-15 cas / 株式会社オール |
会場協力 | Space Roppongi |
展示の作品には、国土地理院オルソ画像、国土交通省位置参照情報、OpenStreetMapをはじめとするデータを加工して使用しました。またopenFrameworks、Blenderをはじめとする、ユーザコミュニティにより維持されているツールを利用し制作しました。誰もが情報を自由に利活用できるオープンな社会への賛美を込め、これらのリソースの整備・開発に貢献してきたみなさまに謝意を表します。
本展覧会は、公益財団法人現代芸術振興財団の行う「CAF (Contemporary Art Foundation)賞」の最優秀賞の副賞として行っております。CAF賞とは、学生の方々を対象に若手アーティスト育成を目的として2014年より毎年実施しているアートアワードです。最優秀賞受賞者には賞金100万円のほか、副賞として個展開催の機会を提供しております。