西村有未
私は、物語的イメージと物質性(マチエール)が拮抗する場で、絵画の可能性を探っている。また、そのための手がかりとして、「図形的登場人物」というモチーフを扱っている。
「図形的登場人物」とは、民間伝承文学研究者マックス・リュティが示した概念であり、昔話において、内面や肉体的描写を省かれ、図示的な役割として配置される存在を意味する。私はこの平坦な存在と物語のシステムに、ときに複雑な想いを重ね、現実と地続きの容赦なさを感じてしまう。だからといって、その内側を補足する挿絵を描くわけではない。つまり、この感情が制作を駆動するエンジンとなるのだ。
イメージと色とマチエール、そして感情を重ね続ける行為は、地図も方向も定まらない抽象絵画の海を泳ぎ続けるためのオールや燃料である。そして、これらに転がされ続けた絵具は、滲出液のようににじみ出る状態を経て、やがてかさぶたのような層を形成していく。こうしたプロセスのなかで、絵は次第に私の手を離れ、一つの生き物のように立ち上がってくるのだ。
2019年京都市立芸術大学大学院 美術研究科博士(後期)課程 美術専攻研究領域(油画)修了。
近年の主な展覧会に「Salt Tongues / Far Shores Near」(Objectifs – Centre for Photography & Film,シンガポール,2025)、「絵⇄それらを生む物語の態度」(半兵衛麸五条ビル2F ホールKeiryu, 京都, 2025)、「岸む音/際の上 Murmuring Shores / On the Brink」(尾道市立大学美術館, 広島, 2024) 、「犬石物語(I still live there)」(FINCH ARTS, 京都, 2023)、「Kyoto Art for Tomorrow 2022 -京都府新鋭選抜展-」(京都文化博物館, 京都, 2022)、「絵画の見かた reprise」(√k Contemporary, 東京, 2021)、「Encounters in Parallel」(ANB Tokyo, 東京, 2021)、「HOI POI Japanese Contemporary Painters」(SPACE Four One Three,ソウル,2021)「第3回CAF賞」(3331 Arts Chiyoda, 東京, 2017, 審査員賞「保坂健二朗賞」受賞)、「TWS-Emerging 2013:例えば祖父まで、もしくは私まで。こんもり出現」(TWS本郷, 東京, 2013)、「現役美大生の現代美術展 -Produced by X氏」(Kaikai Kiki gallery, Hidari Zingaro, 東京, 2010)など。
[コレクション] 高橋龍太郎コレクション, KANKURO UESHIMA COLLECTION, 山梨学院大学
[ワークショップ] 練馬区立美術館(東京, 2013)