本展は、今年5月に逝去した著名アメリカ人アーティスト、ロバート・インディアナの追悼展です。インディアは1960〜70年代に台頭したポップ・アートとハード・エッジの巨星として、これらのムーブメントが世界を席巻するなか絶大な存在感を放ち、多くのアーティストやデザイナーに影響を与えました。彼のペインティングや彫刻に登場する「O」の字を傾けた「LOVE」の表象は、現代の視覚文化における新たな共通言語となり、アートやポップ・カルチャーの領域でアイコンとして広く知られるようになりますが、その背後にいつもあったのは、人々の生活における愛と平和への、作家のヒューマニスティックな信条でした。
孤児として生まれ、インディアナ州の義両親のもとで育った作家を絶え間ない創作活動へと向かわせたのは、溢れる才能と確固たる決意、そして理想を追求する姿勢でした。本展では、1960年代〜2000年代の長きにわたるインディアナのアーティスティック・キャリアと人生を重要作品からご紹介するとともに、今日もなお問題となっている反戦運動をはじめとした、この時代の人々の奮闘のあとを辿ります。紛争にまみれ対立関係が顕著となっていくかに見える現代社会において、ロバート・インディアナのアートは人々に、直接的に、そして明快に語りかけるでしょう。
(ゲストキュレーター:手塚美和子)