「CAFAA賞(CAF・アーティスト・アワード)」は、現代芸術にかかわるアーティストを対象としたアートアワードで、次なる世代の柱となる才能あるアーティストを選抜し、国際的に活躍するきっかけを提供することを目的に、大学・大学院などの教育機関を卒業後、10~15年程度のアーティストを対象に、2015年より実施しております。
この「大学卒業から10〜15年後」という時期は、アーティストのキャリアにおいて、「若手」と呼ばれる時代から抜け出て、さらなる飛躍が求められる、最も重要で、また困難な時期でもあります。既に成熟しきったアーティストや作品をただ顕彰するのではなく、その困難かつ重要な時期の真っ只中で奮闘しているアーティストのなかから、次なる世代の柱となる才能あるアーティストを選抜し、国際的に活躍するきっかけを提供したい、そうした思いから、私どもはこの「CAFAA賞」を設立いたしました。
今回は約250件のエントリーがございましたが、その多くが既に活躍されているアーティストの作品だということもあり、審査は大変な困難を極めました。その中を勝ち進んだ、この6名のファイナリストの皆さんは、作品のジャンルも、キャリアも、バックグラウンドも様々です。審査員の間でも白熱した議論が交わされ、ようやく、この後発表いたします、ただ一人の最優秀賞者を決定した次第です。
日頃より当財団の活動へご理解いただいておりますこと、この場を借りて、あらためて深く御礼申し上げます。今後とも、皆さまの暖かいご支援、ご協力を賜りますよう、何卒よろしくお願いいたします。
公益財団法人現代芸術振興財団 事務局
プロフィール:
1980年大阪生まれ。京都市立芸術大学卒業。近年の主な展覧会は、「MARIKO」matchbaco(東京、2015)、「楽園とその他の実験」代々木アートギャラリー(東京、2014)、「幼い頃に切除すればそれは大きく美しくなる」ギャラリー福果(東京、2013)。第30回ザ・チョイス大賞受賞(2013)。
受賞した感想:
この度は大きな賞を頂き、大変感謝しています。
小さいマリコちゃんも疲れきっていますが、とても喜んでいます。
彼女の力だけではなく、理解を示してくれたすべて方のおかげです。
ご協力頂いた皆様、審査員の皆様に心から御礼申し上げます。
最後に小さいマリコちゃんからの言葉を記載しておきます。
「生きれるだけ生きようと思うの
芸術はイカロスの翼
飛べば飛ぶほど、太陽が私を殺しに来る
それでも私は海の切れ落ちる辺りまで飛んで、その恐ろしさに心臓を摑まれたい
真っ黒な滝となった海が落ちていく奈落の、一瞬の冷たさに串刺しになりたいの」
審査員からのコメント:
【アーロン・セザ―】
デルフィナ財団は設立以来、30年にわたって若手アーティストの実践の発展とキャリア形成への支援に努めてきた。今回、現代芸術振興財団との提携により、第2回CAFAA賞を松下まり子さんに授与することができ、喜ばしく思っている。私たち審査員と現代芸術振興財団は、この機会がその作品に大きな変化をもたらすであろう新進アーティストに賞を授けたいという思いで、松下さんを選出した。それはつまり、今回のCAFAA賞がアーティストとしての変化と成長を重視していることの表明でもあり、またこれは、賞の影響と結果がすぐには目に見えづらいことから、ひとつの組織の決定としては大きな意味を持つ。松下さんはディスカッションで、絵画を超えてパフォーマンスや文筆、インスタレーションにも取り組んでみたいと明かし、その可能性を感じさせてくれた。彼女の今後の変化を見守っていきたいと思う。
【小林正人】
ファイナリスト6名の作品は誰が賞を取ってもおかしくなかった。だから最終プレゼン、つまり作家のプレゼンスが全てを決めた!
アートはそれを作る人間の命あってこそのものだ。
松下まり子さんが紅い洋服で現れ、絵の前で拙い英語で、間違いなくこの日のために!死に物狂いでまだ血を流しているような言葉を吐き出す、無自覚のパフォーマンスを見ながら、アートはそれを作る人間の命あってこそのものだ!と久々に痛感した。スプツニ子!は草間さんの若い時みたい。。。と。
彼女は絵を描かなかったら生きていけない人間だ。絵に救われ、絵に操作され、、でも、全く自分のためだけに描いているから人に知られないし、絵で食べていくことは出来ない、永遠に出来っこない。
アーロンが 「絵が自分から離れる、他人の手に渡ることをどう思いますか?」と聞いたとき、彼女は初めは辛くてしかたなかった。でも、今は与えたいと思っている、与えるという言葉を使った。
その時おれは賞を彼女に決めた!ロンドンに行かせたい!今しかない!NOW OR NEVER!! と感じた。
彼女の将来に期待して賞をあげるのではない。松下まり子は今の30分で未来を変えたのだ!
【スプツニ子!】
松下さんに実際にお会いし、最終審査のディスカッションをしたときに、私は心を打たれた。彼女の英語は堪能ではない。作品にもまだまだ伸びしろがある。それでも、彼女からは死ぬ気でこの審査に臨み、作品を生み、作品とともに生きていこうという強い意志が伝わり、私自身もアーティストとして気付かされる思いがあった。
これから何が起きるのか、どんな奇跡を起こしてくれるのか、将来がとても楽しみな作家。(ペインティングだけでなく、パフォーマンスというメディアにも挑戦すると、新しい道が開けるかもしれない。)ロンドンに行って、どのような成長をしていくのか、見守っていたい。
デルフィナ財団ファウンディング・ディレクター、クリエイティブ・プロデューサー。
キングス・カレッジ・ロンドン(英)大学院にてクリエイティブ・インダストリー修了。All Change Arts(英・NPO団体)、Shubbak(英・アラビアアート・ビエンナーレ)、Caspian Arts Foundation(英)、Davidoff Art Initiative(スイス・NPO)、Marrakech Biennale(モロッコ・ビエンナーレ)等でボードメンバー、コミッティを歴任。『The Art Newspaper』、『Harper’s Bazaar Art Arabia』、『ArtAsiaPacific』、『ArteEast’s Quarterly』等、多数のメディアに寄稿。
東京藝術大学美術学部・大学院美術研究科准教授。東京藝術大学美術学部油画専攻卒業。
1994 年「絵画の子」でVOCA 奨励賞。1996 年サンパウロビエンナーレ日本代表。1997 年にベルギー出身の国際的キュレーター ヤン・フート氏に招かれ渡欧。以降ベルギー、ゲント市を拠点に各地で現地制作を行う。2006年より拠点を日本へ移し、世界各地で作品を発表している。
マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教授、デザイン・フィクション・グループ研究室主宰。インペリアル・カレッジ数学科および情報工学科を卒業後、英国王立芸術学院(RCA) デザイン・インタラクションズ専攻修士課程を修了。在学中より、テクノロジーによって変化していく人間の在り方や社会を反映させた映像、音楽、写真、パフォーマンス作品を制作。2013年よりマサチューセッツ工科大学(MIT) メディアラボ 助教に就任し Design Fiction Group をスタート。
CAFAA賞(CAF・アーティスト・アワード)は、現代芸術にかかわるアーティストを対象としたアートアワードで、次なる世代の柱となる才能あるアーティストを選抜し、国際的に活躍するきっかけを提供することを目的に、2015年より実施しております。今回の最優秀賞受賞者には、賞金300万円に加え、ターナー賞受賞者を多数輩出した実績を持つ英・デルフィナ財団との提携により、現代アートシーンの中心であるロンドンで3ヶ月間にわたる滞在制作の機会が与えられます。
スペイン出身の慈善家デルフィナ・エントレカナレスによって設立された、ロンドン最大のインターナショナル・レジデンス。1988 年にシェアスタジオスペースとしてオープンし、主にアフリカや南アジア、中東のアーティストを対象に運営されていた。2007 年に財団を設立し規模を拡大。現在は全世界から、7年間で200人を超えるアーティストとキュレーターを招へいしてきた。歴代の滞在アーティストには、マーク・ウォリンジャー、ジェーン&ルイス・ウィルソン、タシタ・ディーン、マーティン・クリード、グレン・ブラウンをはじめとするターナー賞受賞者のほか、シャンタル・ジョフィ、マイケル・ラデッカー、ファルハド・モシリ、ヤン・ヘギュ、スーザン・ヘフナ、ヴィム・デルボア、ホスロー・ハッサンザデ、ハリル・ラバーといった有名アーティストも含まれる。(デルフィナ財団 http://delfinafoundation.com)